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飾り扉の使い方  作者: へたすん
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待ち続けた者

ブロードがふと気付くと周囲には誰もいない。先ほどまで目の前を歩いていたはずの3人、ジェイク、キュリー、メフィアは見渡す範囲から姿を消していた。

しかし、部屋の中央に2人の男女がいた。ひとりはまるで人形のように白い肌の女性。赤に黒のアクセントが入ったシンプルなドレスを身にまとい、煌びやかな椅子に座っている。思わず見とれるほどの美貌でその頭に乗った王冠が彼女の地位を示している。

もうひとりは黒く高級そうな服を着た男性。こちらに背を向けしゃがんでいるため顔は見えない。

「どうしてもゆくのか?」

寂しそうな顔をした女性が男に話しかけた。

「…ごめん」

男は短く答える

「迎えに来てくれるのであろう?」

「あぁ。すこし遅くなるかもしれないが必ず迎えに来る」

「ずっと、待っておるぞ?」

今にも泣き出しそうな顔で薬指にはまった指輪を見せつける

「俺が約束を破ったことはあるか?」

「それは卑怯じゃ…」

頬をほんのりと赤く染めながら女性は指輪を弄る

「行きたくはない。でも、行かなければならない。あいつを救えるのは俺だけだから…」

「気をつけて、な」

少しだけ言葉がうわずっている

「もちろん。すぐに終わらせてくるさ」

そう言って彼は彼女の手に口付けた

「じゃあ、また後で。リリィ・フェミリア王女様」

そう言い残して男は地面に吸い込まれるように消えていった

「救えぬ…本当に馬鹿な男じゃ…ヒロト…」

残された女性は堪えていた嗚咽をこぼすと、しばらくの間顔を伏せて泣いていた。

彼女が泣き止み顔を上げるとブロードの方をしばらく見つめ、きのせいかと呟いたと同時にブロードの視界は黒く染まっていく。

──彼女を……

薄れゆく意識の中で、ブロードは誰かの声を聞いた気がした


「…うん?」

ブロードが目を覚ますと傍にジェイクが座っていた

「おう?起きたか。」

「どれ位寝てた?」

体を起こしながら尋ねる

「ほんの少しだ」

見渡すとちょうどキュリーとメフィアが壁伝いに戻ってきたところだった

「駄目だ。完全に行き止まりらしい」

「隠し通路も無いみたい」

「そうか…となると来た道戻って扉が開くのを待つしかないか…」

「今日はここで休む、よね?」

「おう。で、いいよな?」

ジェイクが確認のために尋ねる

「うん。でもその前に一つだけ確認したいことがある」

キュリーは頷いてこたえたがブロードは夢の内容を思い浮かべていた

「確認、とは?」

「あの玉座に座っていた人のこと」

ブロードは玉座を示しながら立ち上がって歩き出した




「で?何を確認するんだ?」

あとをついてきたキュリーが玉座を眺めながら尋ねる

「左手に指輪があれば…」

最初に確認した王冠は夢で見たものと同じだった。

「指輪?」

メフィアは首をかしげている

「そう。婚約指輪、かな?」

左手であったであろう骨にかかっているぼろぼろになった布をよけるとそこには金でできた指輪があった。長く置かれたはずなのにその輝きは衰えていない

「その指輪がどうかしたのか?」

細かな細工はよく見えなかったためわからないが、遠目に見たぶんには同じものだとわかった。

「多分間違いないよ。夢で見たものと同じだ」

「夢?」

「そう、夢。」

3人はブロードの方を見る。それゆえに頭蓋骨の奥に灯りがともったのを見逃してしまう

「と言っても、あんまりわからないのだけれども」

ブロードはそっと指輪を元の位置へと戻した

「どんな夢だったんだ?」

ジェイクはブロードに詳しく説明するよう求めた

「この人が誰かを見送るところ。確か名前は…」

カタカタと骨が震える。直後4人は玉座より距離をとる。

くぼみに青白い炎を覗かせる頭蓋骨はゆっくりと浮かび上がり、積み上がった骨が頭蓋骨を基準として本来あるべき位置へと浮いていく。そして、人の形を作り上げた


〈我を起こすは何者ぞ〉

4人の脳内に声が響く

「スケルトン…ではないっ!」

骨の魔物との違いに気が付いたジェイクが警戒を呼びかける

〈此処は…人の来る場所ではないぞ〉

「来るぞ…」

滲み出る強い殺意ににジェイク達の緊張は増していく

しかし、今にも始まろうとしている一触即発の空気を壊したのはブロードであった


「ヒロトとは…スギノヒロトの事ですか?」

その一言で滲み出ていた殺意は消え、骸骨の中より覗くか炎がブロードの方へと向けられた

〈…知っているのか?〉

問いただすかのような威圧を受けながらも、ブロードは想像している人物であると確信をした。

「彼の事を私は知っています」

初めて受ける強い圧力に全身から汗をにじませながらも、ブロードは彼の事をゆっくりと話し始めた

月二話で更新予定。17時更新、予約投稿。

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