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飾り扉の使い方  作者: へたすん
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鬼達とブロード

ようやくの再開です。

赤髪で逞しい筋肉を持つ鬼が呼吸をする度に全身から漏れ出す魔力は輝きを増し、炎のように揺らめいている。

全身を巡る魔力は密度を増し、鬼の力を最大限に引き出す。

対峙するブロードに対してふり抜かれた腕は純粋故に強い破壊力を有している。


魔力を纏い、腕を交差させて受け止めようとしたブロードは腕だけでなく胴体の骨が折れる音を聴きながら意識を手放す。

その場に耐える事すらままならずブロードの体は宙をまい、壁にぶつかりパンっと弾ける音をたてた。





青髪で色白な鬼は静かに佇んでいる。

薙刀に似た刃の長い刀を持ち、呼吸すら感じられないほどに存在感が薄く置物のような静かさを感じ取れる。

凝視していても動くような気配はない。


ブロードは5mほどの距離を保ち身構えていたが、瞬きをする一瞬の間に青い鬼は距離を詰め、手の届く範囲まで迫っていた。


咄嗟に目をつぶってしまったブロードは風が頬を撫でるのを感じ取った。

目をひらいたブロードは崩れ行く自分の体を眺めながら意識を手放した。





茶褐色の髪を持ち死人のように顔色の悪い鬼は気だるげに杖を支えにしながら面倒くさそうにため息をついた。


"大地は生命の母にして命の揺籃"


鬼は魔力の篭もった言葉を使う。

古き時代に使われた呪文である。


"全ての命は大地に眠る"


ブロードは地面に命が宿るような、脈動に似た感覚を覚える。

つづけさせてはならないと思うが、近付こうにも足が地面に張り付く様にまとわりつき、ブロードの動きを邪魔している。


"大地よ命を受け入れ給え"


ブロードは【ファイアーボール】などの手段を試すが、それらが鬼へと届くことはなく、飛びながら威力を弱めて掻き消える。


"風よ命を運び給え"


藻掻くブロードの周りに風が流れ始める


"全ての命は大地へ巡る"


足元の土はブロードの足に絡みつき、流れる風はブロードから水分を奪っていく。急速に乾きひび割れた皮膚より滲む血も、わずかな時間で乾燥しぽろぽろと落ち始める。


"命よ大地へと帰り給え"


瞬きした目は開くことが出来ず、ブロードの意識は気が付かぬうちに失われる。


"全ての命に大地の安らぎを"


ブロードであったモノはさらさらと崩れ落ち、地面に広がり散らばった。




肌を小麦色に焼いた髪が茶褐色の鬼。

その手には長剣が握られている。その刀身には炎がゆらめいている。

ブロードの持つ長めの片手剣は良く鍛えられた中々の業物であるはずなのだが……

数度打ち合うとその剣はあっさりと砕け散り、ブロードの負けが決定した。



肌が黒色な鬼は全身を甲冑を着込んでいる。

黒で統一された鎧は魔力で組み上げられたものであり、触れる際にその魔力を弾けさせることで攻防一体の防壁となる。

様子見で振り下ろされたブロードの剣を弾きながら吹き出す魔力が爆発となりブロードから接近戦の選択肢を奪う。

が、距離をつめられたブロードはタックルの威力に上乗せされた爆風で吹き飛ばされ意識を失うこととなる。





「ふーむ。傷ひとつ与えられぬとは。随分とよわよわじゃのう」

全ての戦いを見下ろしていたフェリールはそう評価した。

相手が強すぎることを分かっていてもその事実は変わらない。


目標は全員を同時に相手する事。

そう告げられたブロードは無理だろうと訴えたがフェリールは笑顔で「やれ」と告げたのであった。



さて?ブロードに才能があるかといえば答えはNOである。

仮に戦いの素質があるならば荷物持ちなどという扱いにはなっていない。


フェリールから技術と魔力を与えられてなおその才能が目覚める事は無い。

故に、物量による戦術とも呼べない戦い方となるのも仕方ないことなのだろう。



赤鬼の一撃にはそれを上回る攻撃で。

青鬼の速度には切り切れぬ耐久力で。

土鬼の魔法には魔力の圧倒的手数で。

茶鬼の魔剣術には魔力で作った剣で。

黒鬼の甲冑には纏った魔力の装甲で。



ともあれ何度も意識を手放しながらも出来ることを突き詰めた結果が脳筋ともとれるゴリ押しとなり、ブロードを強くする事に成功したのだった。

次の話で「俺達の戦いはこれからだ」ってなるんです。多分。

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