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飾り扉の使い方  作者: へたすん
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捨て置かれた玉座

「しかしまぁ…随分と深いんだな」

時折下を眺めていたキュリーが呆れたように喋る

四人の乗った足場は落ちるよりは遅いもののそれなりの速度で下へと向かっている

「ブロード、そろそろお願い」

足場の制御をしているメフィアが壁に寄せながら降りる速度を下げる

「あの辺かな?【ゲート】」

壁から飛び出るように扉を作ると全員がそちらへと乗り移る

「ありがと」

魔力回復用のポーションを取り出しながらメフィアは腰を下ろす。

メフィアの魔力が尽きる前に休憩をするのは既に三度目になる。それなりに魔力があるとはいえ未だ底の見えない穴を降りるには魔力が足りないのだ。

「次あたりでそこが見えればいいんだがな」

ジェイクはメフィアとブロード、どちらかが限界を迎える前に休める場所が欲しかった。もしこのままの状況が続けば…睡魔により片方が意識を失えば自由落下を始めるのは容易に想像できる。



「んっ?」

来た道を見上げていたキュリーが何かに気付く

「どうした?」

ジェイクがそれに反応し見上げると何かが落ちてくるところだった

「…………っぁぁっ!ぐきゃぁぁぁ……」

4匹ほどのゴブリンが彼らの横を通り過ぎ落ちていった

「あぁはなりたくねぇな」

肩を竦めながらキュリーが呟く


──チッ

耳をすませていたキュリーの耳に小さな音が届いた

「でもどうやら次で終わりみたいだな」

「落ちたのか?」

「多分、ね」

「なら、行きましょうか」

横になっていたメフィアがおきあがりながら話に入ってきた

「いいのか?」

「えぇ。回復は十分よ」

「じゃ、さっさと底を調べに行くか」

その声で4人は立ち上がり端へと寄る

「空に踏み出す我らに足場を【エアステージ】」

ゆっくりとした口調でメフィアが魔法を唱えると半透明の足場ができ4人はそれに乗り移る。

ブロードが扉を消すとゆっくりと降下を始める

「ただの落とし穴で無ければいいが」

ジェイクの呟きには誰も答えない




深い穴の底は若干の傾斜がついた平らな場所だった。

「なんもねぇな…」

先に落ちたゴブリンの遺体がある他には変わったところは見当たらない。

「となるとあっちか」

傾斜の底、最も低い位置には壁に沿って1mほどの溝ができている。そしてその先の壁には人が立って歩ける程度の穴が空いている

ふと違和感を覚えたキュリーがゴブリンの叩きつけられて潰れた死体を見つめるとゆっくりと動いていることに気がつく

「なんだ、ありゃあ」

たいした傾斜でもないのに先に落ちたゴブリンのものと思われる装備がゆっくりと動いていたのだ

「あれ…スライムじゃない?」

メフィアが指さすのはゴブリンの下を這う黒色ののスライムだ

「死体を…運んでいる??」

掃除屋とも言われるスライムは特定のものを取り込み消化する能力がある。しかし、知能らしきものは発見されておらずエサに向かって進む以外の行動はしないはずなのだ。

「それでここには他の死体がないのか…」

理解はできたものの納得のできない表情でジェイクがため息を漏らす

「あの道の先に行けば解決するかもよ?」

軽い調子でキュリーは言うがその目は自身の装備を確認している

「それもそうか」

ジェイクは剣を握り直すと穴へと歩き出した


「【ゲート】」

ブロードが扉を橋がわりに繋げるとそれぞれ渡り出す

「ジュエルスライム…」

溝を覗いたメフィアはそこで蠢くモノに心当たりがあった。

ジュエルスライム。それはスライムが成長した姿と言われているが、突然変異とも言われている。特徴は身体に宝石をはやしている事だ。宝石が大きい程長く生きた証拠とされている。

だが、成長した個体ほど悪食となり魔法すら食べるようになると言われている

「あれは…随分とでけぇなぁ」

同じく知識のあるジェイク。宝石を剥がせば倒せるのだが…

「倒すにはちょっと多いわね…」

剥がそうとすれば暴れだし、手当り次第に食べようとするのだ。過去には大きな被害が出たとも伝えられている

「無理ならさっさと行こうぜ?」

既に洞窟へと入ろうとしているキュリーがふたりを急かす

「それもそうね」

4人が渡り穴へと入ると、橋が消えた溝にはゴブリンの死体が投げ込まれ、餌に喜んだらしいジュエルスライムがもぞもぞと動いていた…




なんの変哲もない道を少し歩いた先には少し開けた空間があった。

高さは5mほどで奥行は8mほどであろうか?その中央には椅子があり、その上にはその場で亡くなったであろう骨があり、僅かに残った衣服が引っかかっている。

「随分と豪華な椅子だな?」

周囲を警戒しながらキュリーとジェイクがゆっくりと近付く

「王族、か?」

その椅子には細かな装飾が施されていたのだが、いまは輝きすらなく長い間放置されたものだと見て取れる。その骸骨の頭には王冠のようなものが乗っている

「敵は…流石にいないか」

それが玉座であるならば、その前で暴れるようなことはないだろうと考察した

「だが…出口もねぇな」

周囲を見渡すと出口となりそうな穴などがないことがわかる

「どうしたもんかねぇ?」

肩の力を抜いたジェイクは壁沿いにまわってみるかと考えた時、頭にチリチリと痛みを感じた

「チッ…精神干渉か」

他のメンバーを見るとキュリーもメフィアも、頭を抑えながら頭痛を感じた事が見て取れる。ただ1人、抵抗に失敗したらしいブロードは玉座を見つめながらブツブツと何かを呟きながらゆっくりと玉座へ向けて歩き出した

「メフィア!」

それが洗脳の類であれば早く正気に戻す必要がある。暴れられる可能性もあるのだ

「安らかな眠りを【スリープ】」

意識を失ってしまえば起きるまでに対策も取れる。

ゆっくりと目を閉じたブロードは糸の切れた人形のように、その場に倒れたのであった…


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