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飾り扉の使い方  作者: へたすん
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訓練の始まり

ふと、デスマーチやRE:を見ていると新たな設定で話を作りたくなります。

が、この話を完結させるまではメモ帳に書き記して置くことにしました。

本当に、個性ある作品というものは難しいものです。

「そろそろ赤土の人が来る頃じゃないです?」

宿で待ち合わせと言っておきながら朝まで飲み明かしたフェリールにブロードは問いかける。


「むっ。もうそんな時間か?」

思い出話に花を咲かせた2人はようやく話すのを止めた。

「待ち合わせでもあるのか?」

魔物と精霊、2人の酒豪はザルのようで一晩かけて大量の酒を飲み下した。

部屋の傍らで付き合わされたジャックさんはうなされながら眠っている。


「仕方が無いのぅ、祭壇は使っても良いのだよな?」

「あぁ。だが少し風を通しておこう」

「ではすぐに連れてくるでな」

フェリールは後ろで束ねた黒髪を解きながら立ち上がり扉を開く。宿への直通路だ。

「ではまた後に」

そう言ってフェリールは扉を潜り、その後ろをブロードが追いかけた。




「すまん!」

フェリールの開口1番に出たのは謝罪の言葉だ。

「すみません。待ちましたか?」

ブロードも続ける。

「いやいや、ちょうど来たところさ」

そう言った赤土の団長、テッドは爽やかさを纏って笑ってはいるが目の前にはカラになった器が置かれている。飯を食べる時間は十分にあったらしい。

「2人は…朝食は?」

「大丈夫です」

テッドの質問に答えたのはブロードだ。


「場所はうちの訓練場でいいかな?」

「それはやめておくのが無難じゃ。多少の損壊ではすまぬでな」

「一体どんな訓練をするつもりなんだい?」

「それは見てのお楽しみであるが、まずは人目の無い場所へじゃな」

「とりあえず訓練場で聞こう。移動はその後で」

「うむ」

その後訓練場から火吹き山へと移動することになるのだが、ゲートの魔法を目の当たりにしたふたりが驚き固まって、質問攻めにしたのは言うまでもないが、フェリールは細かい説明をする気はなかった。




「ここは…?」

テッドは周囲を見渡しながらここがどこであるかを探っている。

「ようこそ、火吹き山へ」

見てわかるほどに鍛えられた肉体を持つイフリートが声をかける。

「通常であれば直接ここで出会うことはないのだが…今日は特別だからな」

イフリートは積み上げられた酒樽の横に胡座をかいており、猪口で酒を傾けている。

周囲には酒瓶が転がっており、その隅にはうなされるジャックの姿もある。


「まず、リヴィにはパートナーを作ってもらおうと思う」

フェリールはどこからとも無く酒瓶を取り出しイフリートの側へと腰を下ろした。

髪を後ろにまとめてポニーテールにしたリヴィはそれを聞いてテッドの裾を握り締めている。

「なに、従魔みたいなものだ」

イフリートがフェリールの言葉に補足をする

「その金属は置いて行け。溶け落ちる可能性があるからな」

訓練のために付けていた装備を指して説明する。


「さて、祭壇へ行って来るといい。良き相棒に出会えるといいな」

いくつかの簡単な注意を終えたイフリートは奥の通路を指さした。

「祈りの間はする事が無いであろう?テッドはそこの男を介抱してやるのじゃ」

何本目かの空になった瓶を足元に転がしてフェリールは立ち上がり、それにブロードとリヴィが続く。

「また後でな」

フェリールはそう言って歩き出す。

「ゆっくり楽しんでおくさ」

イフリートは猪口を掲げて見送った。




通路の先にあるのは円形の台座だ。その手前には階段が伸びており、周囲には燭台が取り囲むように並んでいる。

先程までの部屋とは違い部屋は揺らめく炎のみで照らされており、薄暗さの中にどこか神聖さを感じさせる。

「我らはこれ以上は近寄るべきではない。あの台の上で祈りを捧げ、聞こえた声に答えれば良い」

リヴィはしっかりと頷いて祭壇へと歩き出した。


「ちなみに、以前もここに来たことがあるんです?」

リヴィの背を目線で追いながらブロードが尋ねる。

「うむ。正攻法であればここに来るまでに実力を見せる必要があるでな、ここに入れること自体珍しいものなのじゃ」

「実力って言うと…戦闘ですか?」

「イフリートとの対決に勝てる者など100年に1人おれば良いほうじゃ」

「……もし負けたら?」

「骨すら残さず燃え尽きるであろうな」

その言葉にブロードは顔を青くしながら戦わなくて良かったと安堵した。



祭壇の中央に腰を下ろしたリヴィ。彼女が目を閉じると部屋が僅かに明るくなったように感じる。

否、実際に明るくなっているのだ。燭台に灯った明かりは勢いを増し、赤く燃えていた筈の炎は次第に蒼く燃え盛っていく。

「ブロード、よく見ておくのじゃよ?これはひとつの奇跡じゃからな」

そう言ったフェリールも視線を逸らそうとはせず、儀式を見逃すまいとじっと見つめていた。

蒼かった炎は次第に輝きを増し、白く光り始めている……

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