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飾り扉の使い方  作者: へたすん
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火口のひと吹き

火吹き山の火口は直径80メートルほどの円形でマグマがぽこぽこと音を立てている。

「中々の温度じゃなぁ」

フェリールはそう呟くがそこは溶岩地帯。涼しそうな顔をしているがブロードにとってはたまらない暑さである。腕の中の毛玉は耳をだらりと垂らしてひゅうひゅうと浅い呼吸をしている。

「さっさと終わらせようぞ」

「その前に、連れをどうにかしてやれ。あれは耐えきらんだろう」

イフリートはブロードを眺めながらフェリールへと忠告をした。


「お前さんはこれを使っておくのじゃ」

フェリールが取り出したのは1枚の板。そこには複雑な模様が描かれている。

「これは…何です?」

「ふふふ、使ってみればわかるのじゃ!」

促されるままにブロードが魔力を流すとそれまでの気温が嘘のように心地の良いものとなった。

「発動を切らさぬ限り続いてな、効果範囲は両の手を伸ばした程度じゃ」

「快適ですね、これは」

「あとはそこの隅で見ておくが良いぞ」

フェリールが指さすのは壁際にある窪みだ。

「始めるのは少しだけ待ってくれ。俺も契約者を呼んである」

「ほう?近くに居るのか?」

「迎えに行かせたからな、すぐに来るさ」

ぁぁあああ…

どこからか悲鳴が届く。その声は次第に大きくなりブロードの耳にもしっかりと届くように大きくなり響き渡る。

「ぁぁぁっ!あぁああぁ!」

声のした方向を見上げると勢いよく黒色のリザードマンが飛び出してきた。その背には声の主である男がしがみついている。

「あぁぁっし、死ぬうっ!?」

リザードマンは勢いよく火口へ飛び込んだ。結果は溶岩の中央へと飛び込むようなものでリザードマンは浸かっても大丈夫なのかも知れないが背に乗っている男には致命傷であることが容易に想像できる。

「来たか」

イフリートは気にした様子もなく眺めている。

その様子にブロードは思わず声を出しそうになるが、リザードマンは溶岩の上に着地するとまるでそこが陸地のような感覚で走り抜けるとブロードの側へと向かい背に乗った男を下ろした。

「大丈夫ですか?」

ブロードはジャックを壁際に案内しながら声をかける。

「あ、あぁ、大丈夫だ。死ぬような、状態じゃない」

ひぃひぃと浅く呼吸をしながらジャックは答えるが、その顔は青白くとても大丈夫には見えない。


「待たせたな。では始めるか」

イフリートが両手を軽く広げて伸ばすと、溶岩は時計回りに流れ始める。同時に中央部がゆっくりと下がり始め、黒色の台座が姿を表した。

「うむ。面倒事は手早く終わらせて飲み明かすとしよう」

フェリールは中央へ現れた台座へと飛び移ると空中に足を置いて台座を正面に見据えた。

「久方ぶりの全力じゃからな、加減は出来んぞ?」

光の当たらぬ暗闇のような魔力を拳に纏い、フェリールは片足を引いて拳を構える。

「無論!そうでなくては!」

イフリートが愉快に笑うのをブロード達は冷や汗を浮かべて眺めている。

「何をするか聞いてます?」

「いや、呼ばれただけで聞かされていない」

「凄く危険な予感が逃げろと告げているんですが…」

「奇遇だな、俺もだ」

身を寄せあって震える二人にラビ首を傾げ、リザードマンは伸びをしながらふあっと小さく欠伸をしていた。



「いつでも良いぞ!」

イフリートの声にフェリールは頷いて答える。

「ならばゆくぞ!一 撃 爆 殺!」

目にも止まらぬ速さで振り抜かれる拳は台座を揺らし、地の底へ向けて押し下げる。

ゴゴゴと音が地面を揺らし、台座は深く沈んでいった。


地面の揺れは大きくなり、溶岩がじわりと膨らむ。

「巻き込まれるなよ?」

イフリートが声を上げると同時に、台座によって押し下げられ、行き場を失った溶岩が天高く舞い上がったのであった。



吹き上がった溶岩はイフリートによって制御され、岩を吹き上げることもなく真っ直ぐに空へと伸びた。

次第に勢いを失った溶岩はゆっくりと落下を始めるが、まるで時を巻き戻すかのように火口へと落ちてゆく。


「こんなもので大丈夫か?」

フェリールは肩を回しながらイフリートへと尋ねる。

「あぁ、十分だ」

「では祭壇を借りても良いか?」

「まぁ、良いだろう。特に使う予定もないからな」

「では久しく飲み明かすとしよう」

「もちろん、持ってきているのだよな?」

「当然じゃ。一晩では余るほどの量があるのじゃ」

ひと仕事を終えた二人は意気揚々とその場を後にした。

「ついて…行くしかないですよね?」

ブロードは忘れ去られていることを直感する。

「詳しく聞かないとならんしな…とりあえず追いかけよう」

ジャックは深く考えることを辞めた。

リザードマンは残された二人に手を振って立ち去る。向かう先はフェリールたちが向かった方向と真逆だ。

「とにかく、追いかけて聞いてみましょう」

二人は歩き出し、ラビはブロードの肩できゅっきゅと鳴いて肯定した。

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