迷宮、エルの竪穴
第1話でキャラクターの容姿についての情報を入れ忘れていたのでのあとがき部分に追加しました。今後あとがき部分で解説をしていく形にしたいと思います。
「さて。ブロードの魔法が戦闘に生かせるかどうかを試したくてな。2,3日エルの竪穴へ行こうかと考えている」
冒険者ギルドのフリースペースでジェイクはこれからのことを話しだした。
「どのへんまで潜るんだ?」
特に否定する理由もないキュリーが詳細を促す
「確認が目的だからな、潜っても上層の下あたりだ」
「となると…昼過ぎには迷宮へ?」
「そうだ。様子を見ながらになるから早く出ることになるかもしれん」
「じゃ、異論もないみてぇだからさっさと行くことにしよう」
エルの竪穴はかつて貴族が地下室を作らせようとした時に迷宮を掘り当てたとされている。エリア事にボスを倒せばさらに下へと降りられるという階層型で便宜上、上層中層下層と大まかにわけられているが、発見より150年ほどたっているが未だ最奥が見つかっていない未踏破の迷宮だ。
乗合馬車を使った彼らは昼前には迷宮のあるエクルードの町へとたどり着き、食料などを買い揃えて迷宮へと入ったのは昼過ぎのことである
「ごぎゃあ!」
「ふんっ!」
バランスを崩したゴブリンにジェイクが剣を突き立てると少しの間を開けて動かなくなる
「ふぅ…こうも簡単に倒せるようになるとはな」
ゴブリンから魔石を剥ぎ取りながらジェイクがつぶやく。
ブロードは相変わらず後方に待機しているのだが、魔物の足元に扉を作ることで踏んだり躓いてバランスを崩した魔物にジェイク達が攻撃をするというパターンを作っていた。
エルの竪穴上層は蟻の巣のように枝分かれをしながら時折大きな部屋かある構造となっている洞窟で、現れる魔物は人形のものが多い。
「だいぶタイミングが合ってきているからこのまま大部屋へ行っても大丈夫そうだな?」
「私もだいぶ魔力を温存出来てるし、余裕はあるわね」
「まぁこの先の部屋はグループのゴブリンらしいし大丈夫でしょ」
そんなやりとりをしながら先へと進んでいく。
「さて…突入するが準備は?」
迷宮内部の部屋は突入後に出入口が消え、部屋ごとに決まっている魔物が召喚されるとそれを全滅させる事で先に進めるようになる。召喚術を持つ魔物でもない限り新たな魔物が出現することは無いというのが常識だ。
「いつでも」
「私も大丈夫」
「いけましゅ」
噛んでしまったブロードは恥ずかしくなり顔を逸らす
「じゃあ行こうか」吹き出しそうになったジェイクがなんとかこらえて部屋へと向かう
その後でキュリーが口を固く閉じながらククッと漏らす
「さくっと倒してしまいましょう」
言葉には出さないがメフィアの顔は清々しい程に笑顔だった
気持ちを切り替えながら4人が部屋へと踏み込むと20mほどのかまくら型の部屋は出口をなくし、ぼんやりと光ったかと思えば6体のゴブリンが部屋の奥に現れた。
「杖持ちだ!」
五体に囲まれるように位置する1体の違いに気が付いたキュリーが叫ぶ
杖持ちとは低級魔法の使えるゴブリンを指す。魔法が飛んでくることを警戒するようにという意味だ
「まずは一つでも…」
削る、そう呟きながら駆け出したキュリーとジェイク。彼らはすぐに異変に気が付き足を止めて振り返る
彼らの、いや、部屋の床全体を埋め尽くしたゲートの魔法。2人はその魔法を使ったであろうブロードを見るが同じく驚いているブロードは首を横に降る。
その反応に嫌な予感がした2人は少しでも距離を縮めるためにメフィアの元へと駆け出す
直後、足元の扉からガキンと音がしたかと思えば重力に従いその戸を開いたのであった。
「空を駆けんとする我らに足場を!【エアステージ】」
メフィアが魔法を唱えると足元に半透明な足場ができ4人はその上に落下した。
同じ部屋にいた6体のゴブリン。彼らはぎゃあぎゃあと騒ぎながら、なすすべもなく底のみえない穴へと落ちていく
「間一髪、だな」
素早く高度したおかげでなんとか足場に届いたジェイクが呟く
「上は…閉じたか」
キュリーが見上げながら状況を確認する
「ひとまずは降りるしかなさそうだな」
未だゴブリン達の落ちる音が聞こえてこない穴を見下ろしながらメフィアはゆっくりと足場を下降させていくのであった…
ゴブリン
緑の小鬼と呼ばれる150ほどの身長をした緑の魔物。知能は低く鈍器を振り回す戦い方をしている。
希に杖を持っていて魔法を使えるものがいるが、使える魔法は一つだけである。