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飾り扉の使い方  作者: へたすん
34/55

王城にて

物語を繋げるのが苦手なのでニンジャスレイヤー形式にしたいところでありますが、どうなんでしょう?同じような描写が繰り返されるのって飽きますよね?

舞踏会、それは様々な思惑が交差する場所。あるものは笑われ、またある者はほくそ笑む。相手の腹を探り合い、誰かの失態を待ちわびながら虎視眈々と機会を伺う、華やかな見た目とは裏腹にその背景には黒いものが蠢いている……


が、そういったことに一切の縁のないブロードにとっては知ることの無い話である。フェリール、エルドリヒと共に入城した彼は会場の隅で黙々と口を動かしていた。

フェリールが貴族の方々に呼び止められている間、彼に出来ることは特にない。

彼が宿に帰るまでにすることがあるかと言われてもなにもないのだが。


「もご。これもなかなか」

会場の中央は人が舞えるようになっているが隅の方には立食用の食事やドリンクなどが並べられている。

彼のようにその場から離れずに飲み食いをしているような人はいないし、食べるために参加しているような者は居ないので特に話しかけられることもなく食べ進めることが出来ている。

彼の服装は他の参加者に見劣りしない上品な物にはなっているが、忙しく口を動かしている姿は少し残念なものとなっている。

そして、そんなブロードとは関係なく事態は進行していく……



最初の異変は女性の悲鳴だった。中央で響いた声に動揺が広まりざわざわとした雰囲気になると同時に部屋の明かりが弱まっていく。

決してあかりが消えた訳では無い。変わらず灯されているにも関わらず、徐々に部屋が暗くなっているのだ。

まるで闇が光を飲み込むかのようにゆっくりと、部屋の中から明るさがなくなっていく。

「何が起きた!」「どうなっているんだ!」「外へ!」

ざわめきが広がり得体の知れない現象に逃げ出そうとする者が現れた時、彼らの背中をぞくりと震わせる恐怖が訪れる。


部屋の中央、そこには一人の女性が倒れている。その身体には刃物の柄が覗いており、赤色の水溜りを広げている。

その隣に立った男が呪文を唱え終わる時、伏した女性から青白いゆらめきが現れて周囲を青く照らし始めた。


「供物を糧に、願いを聞き入れたまえ」

男のつぶやきに答えるように、女性を包む炎のように揺らめくモヤが女性の姿を多い尽くし、ひときわ強く揺らめくとその勢いを減らしてゆく。

周囲の者達に死の恐怖が絡みつき、逃げたい心とは裏腹にその足を地面と縫い付ける。

『……ねがいを』

広がったまま低く留まる青白い炎、その中央に闇をまとうかのようなマントに身を包んだ何者かが現れる。

マントは黒だとわかる。しかしその黒には輝きや跳ね返りといった色がなく、本当にその場にあるのかを疑いたくなるような、不安を煽る色である。

「私をこの国の王に!」

男は率直なねがいを声に出した。

恐怖を感じていないのか、男の顔には笑が浮かび、両の手を伸ばして片膝をついた。

それにマントの者が答えるよりも前に割って入る者達がいる


「のいてくれ!」

動けなくなった人垣を掻き分け、ガチャガチャと鎧を鳴らしながら中央へと進み出したのは警備の兵士達である。

「リッテンハルト卿!これは何事ですか!」

指揮官らしき者は見てわかる状況から速やかに判断を下し、10人ほどの兵士がマントの者と男を取り囲む

「ふふふ、貴様らでは勝てぬさ!」

リッテンハルトと呼ばれた男は振り返りながら立ち上がる。

「雑魚め!己の無力を嘆くが良い!」

『叶えるとでも?』

「へっ?」

驚いて振り返るリッテンハルト。

マントの者から伸びた腕が彼の頭部に載せられる。その手は細く白色の…骨であった。

『____』

マントの者が呟いたナニカ。それは人のものとは思えないおぞましさを内包し、重たく響くように広がってゆく。

そして、骨から滲み出た黒色の液体がリッテンハルトの頭を濡らしてゆく。

「あぁぁ!ぎぁぁあ!あぁっ!っあぁ!」

黒色の液体が男の身体に触れると、煙を上げながらブスブスと音を立てて溶け始める。リッテンハルトが暴れても、頭を固定されているかのようであり逃げ出すことはできないでいる。

振り回した手がマントの者のフードに当たり、その顔が顕になると周りに動揺が走る。そのものには身がついておらず、白骨の骨であったからだ。

「……ぁ……ぅ…」

その後すぐに男の体から力が抜け、だらりとぶら下がっても黒色の液体はその身を溶かし続け、身が焼けるような悪臭を広げていく。

最後に骨の魔物の手を離れた頭蓋骨が地面に落ちる時、その身を溶かした液体は地面に吸い込まれるように跡形もなく消えていた。後に残るのは人であった者の骨の山だけである。



「ひ、ひぃ…」

誰もが恐怖に固まっている中、誰かが漏らした声。それが引き金となり我に返った兵士は抜刀し切りかかって行く。

兵士が剣で乱雑に切りつけると、魔物はあっさりと崩れ落ち、漂っていた恐怖が払拭される。

「倒した、のか?」

誰かが言った。それにより貴族達の中で安堵の声がひろがってゆく。和やかな雰囲気になり始めた会場に1人の兵士は肩の力を抜いて魔物の側に屈んで覗き込んだ。

「なんだったんだ?こいつ…は…」

周囲で兵士が貴族達に離れるように誘導している時、骨の魔物から魔力が漏れ出す。直撃を受けた兵士は意識を失い力なく床に崩れ落ちる。

当然鎧の音で周囲が注目を集める中、骨の魔物はゆっくりと起き上がり服装を正す。

『地獄に、落ちるか?』

魔物の横に倒れている兵士はピクリとも動かない。

「総員抜刀!」

気がつくと同時に隊長格の男が指示を出し骨の魔物へと襲いかかるが、魔物はそれをあっさりとかわす。


『_______』

魔物が呪文を唱え始めるのを黙って見逃す兵ではないが、多数対壱の戦いをこなしながらその呪文は留まることを知らない…

呪文の終わりとともに骨の魔物の足元から吹き出した黒い霧に兵士達は飲み込まれ、その姿を消す。

すぐに散った黒色の霧、その後には兵士の姿は残されていなかった。

誘導をしていた何人かの兵士は戦うことを諦め人の誘導を急かす。


混乱により慌てふためく人垣目指して動き出した黒いマントを身につける骨の魔物の前に立ちはだかるのは黒髪の魔術師、フェリールであった!

「これ以上はさせぬよ?」

黒髪を後ろで束たフェリールは黒色のドレスの裾を引きちぎりながら魔物に対峙する。動き回るには長いドレスは邪魔になるからだ。

正面に魔物を見つめる彼女の瞳は獰猛に輝いていた。


続々と会場入りする兵士の増援にフェリールは叫ぶ。

「人の誘導を最優先!アレは私が抑える!」

「まずは非戦闘員の誘導を急げ!」

兵に指示を飛ばした男は素人目にも業物とわかる両手剣、それを軽く構えながらフェリールに近付き話しかける。

「あれの正体はわかるか?」

目線は骨の魔物に向けられたまま軽く膝を曲げ素早く対応できるように構えている。

「リッチ、であろうな。アレは近接にも対応しておったからの、上位種と見ても良いかもしれぬ」

「…倒せるか?」

「倒さねばならんのだろう?」

「その通りだ!」

言い切ると男は駆け出して魔物へと切り掛る。

『遅い』

流れるように躱す魔物は挑発的な言葉をつぶやく。

「これは避けるか?」

拳に魔力を纏わせたフェリールは魔物が動いた先で待ち受けており、その拳を魔物へとぶつける。

蹈鞴を踏んだ骨の魔物へ兵士の踵が振り落とされ、地面へと叩きつけられる。

「まずは、一撃」

数歩の距離を取りながら、2人は魔物を挟んで身構える。

戦いの火蓋は落とされた……

月に2話は頑張ります。

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