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飾り扉の使い方  作者: へたすん
33/55

お菓子屋の店主

「初めまして。ここの店長をしてるアオキ・ユウカよ」

店員とは違いシャツにズボンといった動きやすい服装の女性。彼女は黒い髪に黒い瞳という珍しい組み合わせだった。

「我はフェリール。会えて嬉しいぞ」

そう言って2人は握手をかわす。

店の中に消えた店員がすぐに招き入れたので今は店の中に入っている。

「で、本当にあるの?」

歓迎ではなく疑っているという態度でユウカは単刀直入に尋ねた。

「ある。と言っても場所を知っていると言った方が正しいな」

「物がないことには信用出来ないわね」

「それはそうじゃ。が、十分価値のある話じゃぞ?」

「価値があるかどうかはこちらで判断します。閉店準備もあるから早めに終わらせてくれると助かるのだけど?」

「うむ。提供できるものはふたつじゃ。一つはかかおについてでな、もう一つはスギノヒロトの厨房の話じゃ」

「スギノヒロトって言うと……あの英雄の?」

「うむ。あの男が使っておったれしぴとやらもあるぞ」

「……長くなりそうね」

「まぁな、立ち話には多いやもしれぬ」

「みーちゃん、お茶を入れてくれる?」

ユウカさんが片付けをしている店員に声をかけると了解にゃっと言いながら店の奥へと消えていった

「さて、座って話をしましょうか」

彼女が指さすのは近くのテーブル席だ。


「さて、その話を聞くのに私はどんな対価を出せばいいのかしら?」

「なに、多くは求めぬよ。こちらが求めるものは美味しい物じゃからな」

「その程度でいいの?あまりにも釣り合わない気がするのだけど」

「お前さんがどのようにこの世界に来たのかは知らぬ。が、ヒロトの遺産はわかるものに使わせた方が良いというだけじゃ。この世界には使えるものはおらんでな」

フェリールから投げられた世界という言葉。それによってユウカは目を見開いて驚いたもののすぐに表情を戻した。

「つまり、出来たものを食べさせることでその対価としてくれるのね?」

少し考えてからユウカはそう呟いた

「うむ。独占しようとは考えておらんし、新作の味見であれば喜んでするでな!ぜひともあちら側の料理をたべさせてくれ!」

「カカオがあればメニューも増やせるし、そんな見返りだと頷く以外に無いのがわかってるでしょ?」

「当然じゃよ。菓子で店を構えている以上、必要なのは間違いないでな」


「あの、お茶が入りました」

みーちゃんと呼ばれていた猫の獣人がお茶を持ってきた。

「ありがと。さて、もう少し詳しく聞かせてもらえるかしら?」

「うむ。まずかかおがあるのは亀裂の向こう、魔大陸と呼ばれておる場所でな、ちょうど良くあちらに行く予定があるでこちらで取ってこよう。そして厨房の件なのじゃがな、お前さんが居ないと立ち入ることすらできんのじゃ」

ここでずずっとお茶を啜ってフェリールは一息ついた。

「緑茶、か……この入れ方もヒロトが好んでおったなぁ……」

この国での茶は鍋で煮出すものが一般的である。

「これと焼き菓子がよく合うんじゃよなぁ……」

そう呟いてフェリールは左の手のひらで目元を覆うと俯いて肩を揺らし始めた。

湿っぽい雰囲気にユウカさんは落ち着くのを待つことにしたらしい。若干戸惑っているようにも見受けられる。

が、ヒロトの話は二度目ともなるブロードはそんなことを気にせずに疑問を口にする。

「前もこんな雰囲気出てましたけど、たしか彼、生きてるんですよね?」

「えっ?」

ユウカさんは驚いてブロードの方を見る。

フェリールはピタリと固まったかと思えばすぐにまた震え始め、直後に声を上げて笑いだした

「はっはっは!流石に何度も通じぬか!」

フェリールは顔を上げて笑っている

「えっ?でも、え?」

ユウカさんは状況が掴めないらしく顔に疑問が溢れている。

「ふふふ、ヒロトは時空に関わる魔法が使えてな、存命であることは間違いがないのだ。が、無事であるかは別なのじゃ」

手元の指輪を撫でながらフェリールは笑顔を見せる

「そうなん、ですか?私は魔法が使えないので詳しくはしらないんですけど…」

情報量の多さに戸惑っているユウカさんが尻すぼみに尋ねる

「む?使えぬことはあるまい?それは適性検査とやらをした結果であろう?」

そう言ってフェリールは腕を組んで何かを考え始める


「エル、魔術ギルドの意向を聞いてこい。メフィアを代表に説明しても良いと伝えてこい」

「わかりました」

エルドリヒは綺麗な動作で一礼すると既に飲み終わっているコップを置いて出ていった。

「要点をまとめるとな、我は美味いものが食いたい。異界の者、つまりお前さんの協力が得られるのであれば設備と材料を提供するということじゃ」

「話はわかったわ。で?私はどんな協力をすればいいのかしら?」

「必要な時に呼びに来るでな、その時に散歩に出る程度の気軽さで付いてくれば良い。それ以外の面倒ごとは我らが引き受けるでな、新作でも考えておれば良いさ」

「それくらいならお安い御用よ」

こうして、フェリールはユウカとの約束を取り付けたのであった。

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