報告
インフルが
病気初めに
やってきた
体調管理には気をつけましょう!(`・ω・´)キリッ
丸いドーム型の部屋、その中央に置かれた玉座に黒髪の少女が腰掛けている。
装飾を施された豪華な椅子とは対照的に部屋には出入口がひとつあるだけで他には何も置かれておらず、殺風景な場所だ。
少女が着ているワンピースは赤地に黒が入り交じり、成長途中の双璧はその存在を確りと主張している。
足を組み頬杖をついた少女は満足そうに微笑みながら口を開く
「報告を聞こうか」
玉座の前には二人の男女が並んで片膝をついている。
ひとりは銀色の髪を書き上げてまとめた初老の執事。
もうひとりは金色の髪を後ろで束ね、シャツにズボンという動きやすそうな格好をした胸の平らな女性だ。
「まず屋台の品は水箱に入れて倉庫へ移してあります。量は多めで買い集めました。次に路地裏の者達ですが首謀者を特定し概要も判明しており、即時介入が可能な状態です」
執事の男、エルドリヒの報告に玉座の少女、フェリールは
「ふむ」
と頷いて続きを促す
「目標は国王及び親族の殺害、冒険者を生贄に魔物の召喚を計画しておりました」
「召喚の対象は?」
フェリールは腕を組みながらに尋ねる。
「私です」
「は?」
声を漏らしたのは玉座の横に立っていたブロード、黄味掛かった茶髪にどことなく大人しそうな印象を与える男だ。
「首謀者の認識では使役できると考えているようですが、純粋に呼び出すだけなので召喚後の影響は特にありません」
「なぜエルの召喚となるのじゃ?」
「迷宮以前に制作していた物が発掘されたようで……当時は呼び出されては魔物を生み出しておりましたので。このまま放置致しますと明日の晩餐会にて発動されるものかと」
「ふむ、それはそのまま利用してやろうかの。関わりある者達を纏めておけ。せいぜい恩でも売りつけてやることにしよう」
「了解しました」
エルドリヒは頭を下げる。
「他には…無いな?では適当に水箱を持ってこい」
その言葉に2人は立ち上がって出口へと歩き出した。
「あの、女性の方は?」
二人の背中を見送りながらブロードが疑問を口にする。
「あれか?そうじゃな、説明しておらなんだか。名をリディアというてな、制約によって眷属となっておるぞ」
「そうでしたか……いつの間に」
「なに、今後は寝込みを襲われる事はなかろうて」
「いや、それは心配していないんですけど」
「なんじゃ?寝起きに美女と言うのは男の夢ではないのか?」
「確かに嬉し……いや、そういう話ではなくて」
「我が良ければいつでも隣に並んでやるぞ!」
一瞬ドキリとしたブロードはフェリールのしたり顔を見てからかわれたのかと頭を抱える。
フェリールが声を上げて笑っているとエルドリヒさんが青色の何かを運んできた。
「いくつかお持ちいたしました」
両手で抱える箱状の液体、その中には屋台の料理が漂っている。
背負っていた小型のテーブルに箱を並べて置く。
「それでは我らは任務に戻ります。必要とあらばまた」
並んでお辞儀をしてエルドリヒさんとリディアさんは部屋から出ていった。
「これ、どうなってるんです?」
形を持った箱状の液体をつつきながらブロードは尋ねる。
「水箱、うぉーたーぼっくすという魔法でな。水を箱として物を入れられるのじゃ」
フェリールが手を伸ばすと水は抵抗なくそれを受け入れ、中から1本の串焼きを取り出して食べ始める
「持てるのに…取り出せるんですか?」
側面と下はまるで石のように固くなっているが、上部は元の水としての柔らかさがある。手を出し入れしても濡れていない。
「この魔法は半日しか持たぬ。が、倉庫を丸ごと留め置く事でそれ以上の保管ができるようにしておるのじゃ」
もぐもぐと口を動かすフェリールを見ながらブロードもひとつの串焼きを取り出して食べ始める。
水の中に食べ物を保存するという行為ではあるが、取り出した串焼きはまるで出来立てのような暖かさだ。
「なんというか…不思議な…」
「凄いであろう?作り上げるのは大変じゃったのじゃよ?」
「作ったって…え、この魔法をですか!?」
「今ある名前付きの魔法はヒロトが考案したものじゃからな。全てではないが一部の魔法には関わっておる」
ブロードが驚いている間もフェリールの手は止まらない。
「さて、1度に全て食べるというのも勿体ない。今日はこの程度でよかろう」
気がつけば2箱の中身はカラになっている
「あっ!」
残っているのは手元にある食べかけの串1本だけだ。
「食べる事は争奪戦じゃよ!」
フハハと高笑いをしながらフェリールは玉座へと戻る。
「わかりました」
納得出来ない表情で串焼きを頬張りながらブロードは答える
「使いどころが限られる魔法も多いでな、必要な時にまた教えてやろう!」
「それは…そうですね、お願いします。で、これはこのままで良いので?」
「すぐにどうにかなるものでもない。構わぬよ」
最後にもう一度箱を触ってから、ブロードはフェリールの側へと歩き出したのだった……
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