ギルドの話
「挑戦者を支援する」
その理念の元に作られた組織がギルドである。
その中でも大きく分けて三つの部門にわかれている。街の外で活躍する冒険者のためのギルド、商売にルールを付ける商人のためのギルド。そして魔法の探求者のための魔術ギルド、である。
魔術ギルド2階、会議室に十数名が集まっていた。手の空いていた職員やたまたま訪れていた者など、建物にいた大半と言ってもいい。
「彼の使う【ゲート】の魔法について皆様の意見をお尋ねしたく思います」
メフィアは壁に扉を出現させながらブロードのことを指さした。
しかし、内容がゲートについてと知ると何人かは興味をなくしたようにため息をついたりと落胆の様子が見て取れる
「ブロード。ここ、並べられるだけ並べちゃって」
手で大きさを示しながら壁の空いた部分を指さす。
指示を受けたブロードは頷き、黙々と扉を並べていく。
25個目の扉を作り終えるとブロードは周りが静かになっている事に気がつく。
「これでぜん…ぶ…」
振り返ったブロードが見たのは一様に目を見開いた皆の姿である
「えっと…??」
状況がわかっていないブロードはメフィアへと視線を向ける。彼女は頭を抑えながら呆れたような顔をしていた
「ブロード、頑張って生きてね」
それはこのあとの流れが予測できるが故の言葉である。
ため息混じりに呟かれた言葉を皮切りにブロードは目の色を変えた研究者に取り囲まれあれこれと質問攻めにあったのであった…
その後2日間休むことなく議論がされ、気がつけばジェイク達との約束の時間が迫っているのであるが…
「次はここに繋げて…」「ここでこの扉を無くすと…」「この場合はどこに起点が…」「この形では…」
次々とあげられる声にブロードは休むことが出来ずにいた
「もう…むり…」
休みたくても休ませてくれない研究者のギラギラとした眼差しに逃げることも出来ず、心体共に疲れ果て意識を失ったのであった
「はっ!」
ブロードが目を覚ましたのは魔術ギルドの空き部屋にある机の上だった。
「目が覚めた?」
そこにはメフィアが山と積まれた紙を整理しているところであった
「えっと…?」
軋む体を起こしながら体を伸ばす
「丸一日寝てたのよ。ブロードには連絡してあるから、明日の朝ギルドへ集合ってことになったわ」
「それで、それは?」
積み上げられた書類を指しながら尋ねる
「話し合いをそれぞれに記録してもらったからその整理。来週にでもまた集まろうという事になったから、しばらくは大丈夫よ」
「それって…また同じことが…?」
「えぇ。今度はもう少し人数が増えるでしょうから覚悟しておいてね」
「2日で…おわるのかな…」
「無理でしょ」
「ですよねぇ…」
「時間を区切って定期的にやればいいと話をしてあるから、倒れるまでってことはないと思うわ」
「だといいんだけど…」
有無を言わさぬあの目つきを思い出し、研究者は怖いのだと感じたのであった…