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飾り扉の使い方  作者: へたすん
21/55

圧倒的勝利

遅くなりましたが今日の分です

「おろぅ…ぐぉうど…」

カラになったジョッキを机に落としながら、男は何かを言っているが舌が回っていないので理解することはできなかった。


「ほれ、次じゃ」

フェリールは追い討ちをかけるようにひと息に酒を飲みほした。

机に置かれた新たなジョッキを掴もうとした男の手は空を切り、勢いそのままに突っ伏した。


少女が笑顔を振り撒きながら拳を突き上げると、すぐさま勝敗のコールがされる。

「さぁ!次はだれじゃ?」

既に3人を部屋の隅に送っているにも関わらず、見た目になんの変化もないフェリールに挑もうとする者はいなかった。


「ふむ、潮時かの?」

賞賛の声は聞こえているが挑もうとする声は現れなかった。

彼女が立ち上がると少しづつ観客が離れていく。対決の様子を語りながらまた飲み直すのだろう。


「さて、帰るぞ」

フェリールは報酬を受け取ったブロードに声をかける

「あっはい!」

酒代を支払っても6倍ほどの量になっている財布を懐に入れながら答える。当然元の財布では収まりきらなかったので道具袋で代用したものだ。


去り際に「また来てくれよ!」と声がしたので手を振りながら答える。

外は既に日が落ちていて月が高く輝いている。


「待て。少し裏道を通るのじゃ」

人の減った道を歩いているとフェリールが何か思いついたように言い出した。

「裏道、ですか?あまりおすすめはできませんよ?」

昼間の賑わいは店の中へと移り、通りに届く声から楽しくしている様子が伝わってくる。すれ違う人達は足早に店に駆け込んだり顔を赤くしていたりと様々だ。

祭の日とはいえ、裏の通りには物騒な話もあれば人攫いの噂もある。襲われる可能性は高いが見た目ほど弱くないので襲ってきた相手の心配をしてしまうほどだ。


「はやく襲われに行くのじゃ。我が対応するでな!」

餌になるつもりらしい。

「彼らも生活に困ってる側ですからね、あんまりいじめないであげてくださいよ?」

「なに、話を聞くだけじゃ。殺めたりはせぬよ」

「頼みますよ?えぇと…ここからだと…こっちがいいですね」

ブロードは帰り道に影響のない道へと歩き出した。フェリールは気がついているのだが、2人のあとを追う者達の事には気付いていない。


王都の治安はあまり悪くはない。現国王の方針によりスラムの支援や定期的な巡回が行われており、揉め事などは速やかに処理される。

とはいえ全てを把握できるわけもなく、裏路地は危険なものという認識は根強い。


「あんたら、随分と稼いだらしなぁ?俺らに恵んでくれよ」

月明かりを頼りに路地裏を進むと、暗闇かから三人の男が顔を覗かせた。彼らの手には刃物が握られていてギラギラと輝いている。


「変な真似はするなよ?」

来た道を塞ぐように更に二人の男が現れる。

「へへ、大人しく金目のものを足元へ置きな。ゆっくりとだ」

男達はじわじわと包囲を狭めてくる。


「ど、どうしましょう」

少し棒読みになりながらもブロードはフェリールに尋ねる。誘い出すために脇道へと進んだのだからこうなる事はわかっていたことだ。心の中では不運な男達に対する哀れみが渦巻いている。


「弱いのぅ……この程度とは」

フェリールは肩を落とすとため息をひとつ吐き出した。

「何を言ってやがる?さっさと金目の物を……」

正面の男の声はドサりという音によって遮られる。

振り返ると背後の二人が地面に倒れ込んでいた。


「て、てめぇ!なにをしやがった!」

向かって左側の男が剣を震わせながら声を上げる

「わざわざ軽くしてやったというに、抵抗すらせんとは思わなんだよ」

倒れている男達はゆっくりと動いてるので死んではいないらしい


「目的は金ではないのであろう?さっさとかかってこぬか」

フェリールは闇に溶けるような黒髪を後ろに掻き上げながら相手を挑発する。

「ぶっ殺してやる!!」

男が叫ぶと同時にフェリールの蹂躙が始まるのだった。


最初に膝をついたのは右側の男。一直線にフェリールが懐に潜り込み拳を腹にめり込ませた。

次に蹴り飛ばされたのは左の男。手に負えないと気付き逃げようと背を見せた直後に蹴りを受け壁へと叩きつけられた。


「で、お前は強いのか?」

最後に残ったリーダー格の男へ男の背後から声をかける。

「うわぁぁぁあああ!」

男が叫びながら振り返りつつ薙ぎ払われた剣にはなんの手応えもなく、ただ空を切るだけだった。


「今ならまだ見逃さんことも無いぞ?ん?」

剣が通り過ぎた場所にはフェリールが仁王立ちをしている。ブロードの目には剣が彼女の身体を切り裂いたようにも見えたのだが、彼女は何もなかったかのようにたっている。


「な、なんなんだよお前はァ!!」

男は闇雲に剣を振り回すがまるで水を切るかのように手応えはなく、剣は彼女の身体を通り抜けていく。


フェリールは口を三日月のようにして笑うと、ゆっくりと男へ向けて歩き出す。

「ひぃい!」

悲鳴をあげて逃げ出そうとした男の足元には黒い何かがまとわりつき、バランスを崩して転んでしまう。

「なにが……」

男の足に絡みついた黒い闇はゆっくりと男の身体を引き寄せる。

「い、嫌だ…死にたくない!おればまだ死にたくねぇ!!」

男は必死に逃げようとするが何をしても無意味だった。

「醒めぬ夢でも見てみるかの?」

フェリールが男の上に跨ると男はガクガクと震えだし、悲鳴を撒き散らしている。

「起きたら感想を聞かせてくれよ?」

小さく何かの魔法を唱えると男は振り回していた手から力を抜き、声を出すことをやめて大人しくなった。


「死んで…無いですよね?」

「こやつらはただの下っ端じゃからな。話を聞くまでは何もせんよ」

フェリールは膝を伸ばして立ち上がるとブロードの方へと声をかける

「後は頼むぞ?」

「依頼主を突き止めればよろしいのですね?わかりました」

振り返ると倒れた男を担ぎ上げているエルドリヒが立っている。

「うわっ!」

声がするまで存在に気づけなかったブロードは驚いて声を出した。


「さて、関係の無い者が出る前に帰るとするかの」

男達をひとまとめに担ぎあげるエルドリヒに驚いているとフェリールがブロードの腕を引いて歩き出す。

「何がどうなっているのか検討もつかないのですが」

ブロードは急な展開に付いていけずに混乱している。

「まずは宿へ行くぞ。話はそのあとじゃ」

グイグイと腕を引くフェリールにため息をつくとブロードは宿へと向けて歩き出した。

彼らがいなくなると路地裏には静寂が訪れたのであった。

誤字脱字報告待ってます。


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