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飾り扉の使い方  作者: へたすん
20/55

飲み比べ

「日没には組み合わせ発表が出来ると思います。明日は遅れずにお願いします」

兵士はそう言って離れていった。



「そういえばお酒は飲みますか?」

夜は何を食べようかと話しながらのんびりと街を歩く

「嫌いではないな」

「では酒屋にしますか」

ブロードは金銭的理由で飲むことは無かったが、それなりにお店は知っているのだ。

「任せるぞ!」

そう言ってブロードの横について歩く。


「ここです」

ブロードが選んだのは比較的酒の種類が多く料理もそれなりに人気の店だ。

まだ日が落ちる前だというのに賑やかな声が店の外にまで響いている。


中に入ると中央あたりに人だかりが出来ている。おそらく対決でもしているのだろうが人が邪魔で見ることは出来ない。

ダンっとグラスを叩きつけるような音とともに歓声が上がっているのでおそらくは酒豪対決あたりだろう。


「いらっしゃい!何にする?」

適当な席に座ると店員が注文を聞きに来た

「今日のおすすめを二人分。彼女にはお酒を」

お酒分として少し多めに支払うと店員は厨房へと消えていった。


「あっ……昼みたいに食べるなら足りなかったですかね?」

「毎食あれではすぐに飽きる。通えぬ場所でしかやらぬよ」

「ってことは普段食べれないものは食い貯めておくってことですよね?」

「そうじゃな!」

「屋台全制覇とかやりかねないってことですよね」

「ふむ、それもおもしろそうじゃな?」

「さ、流石に全制覇はたべきれないですよね?」

「ぬ?何を言うておるのじゃ?」

心底わからないと言った顔でフェリールは首を傾げる

「えっ?」

「食べること、つまり味わう事が目的であって腹を膨らせる為ではないぞ?」

「んん?ちょっと待ってください?食べたらお腹は膨れますよね?」

「普通はな?じゃが我は腹に溜めずに魔力に変えておるでな。食べようとすれば限界などないぞ?」

「……つまり、全制覇しようとすれば出来るってことですよね?」

「うむ!とりあえずやってみるぞ!」

その言葉にブロードは頭を抱えるのであった



「食べたものが変換できるのであればお酒にも酔わないってことになりません?」

モツと根菜の煮物は濃いめの味付けでお酒にもよく合いそうだ

大皿できたそれを二人でつつく。

「酒か?そもそも酔わぬ上に酔いを覚ます魔法もあるでな。潰れたことは無いぞ?」

「さっき屋台全制覇って言いましたよね?それにはちょっと足りないんですよ」

ブロードは既に膨れ上がって閉じきれていない財布を懐から取り出して机に置く。

「ちょうど目の前に飲み比べの賭けをしている場所がありましてね?」

指さす方ではちょうど決着が付いたところらしい様子が見える

「勝つことがわかっている勝負ほど安心できる賭けもなかなか無いですよね?」

酔いつぶれた人が運び出されて部屋の隅に避けられると新たな挑戦者を探す声が響く

「ここにおる!」

目の前の皿を瞬く間に空にするとフェリールは手を挙げて名乗りを上げた。

「まだ…ほとんど食べてないのに…」

数口しか味わえなかったブロードはまた後で注文しようと決意した。


「お嬢ちゃん、飲めんのか?」

ゲラゲラと笑う髭面の男はどこかいやらしい目線になっている。

「人並みにはな?」

気にした様子もなくフェリールは向かいの席に座る。

「さぁ!挑戦者が5杯飲むまでに賭けてくれよ!」

席につくと同時にジョッキで5杯の酒が並べられる。

それと同時に外野が盛り上がるがフェリール側にはあまりかけられていない。名の知れた酒豪と初めて見る少女であればどちらが勝つかなど予想しやすいだろう。

4杯目に入る頃に少しだけペースが落ちたのは飲み慣れていないようにも見える。

「彼女に」

ブロードが財布を机に置くと周りからはざわざわとどよめきが上がる。

「良いのか?捨て金になるぜ?」

外野のひとりが笑いながらそんなことを言う

「これは彼女の物ですからね。その方が盛り上がるでしょう?」

このままだと掛けにならないでしょ?とブロードは続ける。

「では私も勇敢な挑戦者に」

カウンターにいた人がいつの間にか人垣の中に入ってきていてお金を置いた。

「おい、店主が乗ったぞ!?」「マジかよ!」「俺ちょっとのせてくる!」

その後ざわめきは大きくなり掛け金は次々積まれていった。


フェリールが5杯目を飲みきったのは周りが落ち着いてからだ。速度が落ちたことで男側に掛ける人も多かったように見える

「さぁ始めるぞ!」

机にはそれぞれの前にジョッキがひとつ置いてある。

「方法は交互に1杯ずつ飲む。飲みきれず戻す、倒れるは負けだ。良いな?」

「問題ない」

「我もじゃ」

「それでは開始だ!」

先に手をつけたのは男の方だ。一息に飲み干してジョッキをドンと打ち付ける。

「楽しませてくれんだよな?」

「それはできん」

フェリールもひと息に飲みきる

「負けが楽しいなら別だがな?」

不敵に笑うフェリールに男は豪快に笑いながら次の酒を飲むのだった……

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