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飾り扉の使い方  作者: へたすん
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思い出話

10/31投稿→11/24修正

ブロードはリズの村で生まれた。名乗る時はブロード・リズ、つまりリズで生まれたブロードという意味だ。

騎士団長や貴族のような地位であれば家名である名前がこれに繋がるのだが、小さな村の農家の3男ともなれば無縁の話である。


「そもそも毎日魔法を使おうと考えたのは適性検査の後でさ…」


適性検査、とは冒険者を目指す者が必ず通る道である。

ギルドの所有する魔道具に適性を測る水晶があり、それを利用することで魔法の得意不得意を知ることが出来るのだ。

この世界では16で成人とされるため、冒険者を目指すものは14~15の間でギルドで調べてもらうのが一般的だ。


ブロードはかなり早い段階で検査を受けた。結果、初級とされる各属性の魔法すら使えないと診断されたのだ。

これによりブロードは剣士の訓練に参加したのだが、素質が無いと判明してからは荷物運び等をしながらなんとか生活している。


「魔力の扱いが上手いと消費する魔力も少なくなる」

いくつかのチームを転々として出来ることをしていた中で、そんな話を聞いたのだ。

これは正確には正しくないのだが、ブロードにとっては人生を変える一言だった。

それ以来、ゲートの魔法を使い魔力の扱いをうまくするための訓練がはじまったのである。


「もっと小さくなればいいのにって思いながらやってたらひとまわり小さい扉になってさ」

多少の凹凸は問題なく覆うものの、小さな部屋で寝泊まりする時は外に出て魔法を使うしかなかったのだ。

「今ではこのサイズまで小さくできるようになったよ」

ブロードが小さくゲートと呟くと持っていたコップに親指で隠れるほどの小窓が出来ていた


それを見てメフィアはふぅと息を吐きたして天井を見上げる。

話を続けようとしたブロードを手で制しながら深呼吸を繰り返した。

「私の中の常識が崩れる音がするわ…」

疲れたような声でメフィアがつぶやく

「で、これ以上の事は無いわよね?」

目線を下げブロードに向かい合ったメフィアは出さないでほしいと願いながらブロードを見つめる

「う、うん…あとは毎日続けてたって感じで…」

メフィアの眼力に押されてブロードは体を後ろに下げながら答えた。

「そう。」

メフィアが椅子の背にもたれかかったところでブロードはトドメの一言を告げる

「今出来るのはこれくらいだよ」

そう言って彼がテーブルの上に並べたのは拳大の扉の列である。

等間隔に立つ10枚の魔法で作られた扉。それを見たメフィアは現実から逃げるように意識を手放したのであった…






「おーい今回の分が…ってどうした??」

報酬を受け取ったジェイクが目にしたのは背もたれに力なく寄りかかるメフィアのすがたである。

「なぜでしょう?」

はっきりとわかってないブロードには疑問符が浮かんでいる

「こいつがあまりに非常識だったってことだよ」

一連の流れを見ていたキュリーがブロードを示しながら答える

「えっそうなの??」

わかっていない男はそんな事を言う

「受け止めきれなかっただけだからしばらくすると起きると思うぜ」

「そうか…?なら先に仕分けを終わらしとくか」

ジェイクは机の上に袋の中身を取り出して並べる。

「いつもなら1割なんだが…」

いつも通りの分け方で積み上げた硬貨を3割をみっつと1割をひとつで四つに分ける

「今回だけは四分割で分けようと思うんだがどうだ?」

言いながら等しく四つになるように山を再分配する

「俺は良いよ?あの状態から帰れるようになったのはブロードのおかげだし」

「えっでもこれ…」

「それだけの活躍をしたって事だ。いいよな?」

「ええ。いいわ」

意識を取り戻したメフィアがジェイクに答えながら山の一つを小袋に入れ懐にしまう。

「じゃ、決まりだな」

キュリーがそれに続いてひと山を取る

「じゃ、今日はこれで終わりだな」

ジェイクもひと山を取る

「受け取れ、な?」

普段よりも多い配当に困惑しているブロードに対してジェイクが釘をさす

「で、次の予定なんだがな」

「2、3日先でもいいかしら?」

明日からのことを話そうとしたジェイクにメフィアが割って入る

「ブロードをギルドへ連れて行こうと思うの」


「2、3日で終わるのか?」

「わからないわ。でも私ひとりが受け止めるには大きすぎるのよ」

頭を抑えながらメフィアが答える

「そうか…なら3日後にもう一度集まろう。そこで次の話をするとしよう」

この一言でこの場はお開きとなったのだが、ブロードはメフィアに首筋を掴まれて引きずられるように魔道ギルドへと連れていかれたのであった

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