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飾り扉の使い方  作者: へたすん
14/55

対決、角なしの大鬼!!

ブロードが纏の技術を体得するのに時間はかからなかった。

もちろん素質もあるのだが、フェリールの教え方が上手だったからである。長生きしている分、経験も豊富なのだ。


纏というものは魔力を身体に巡らせて身体能力を高める技術の応用に近い。巡らせた魔力を身体の外で留まらせるだけなのでとても単純な事である。


ブロードが名乗りを上げたのは子供が与えられたおもちゃに喜ぶようなもので、純粋にその技を試したかったからだ。


「まずは魔力をめぐらせる」

まるで血液のように、魔力を全身に送り出すと景色は動きを緩やかなものにする。

少しだけ遅く動くようになった世界でブロードは普段通りの動きができるようになる。

まだ循環が上手くいっていないため、ブロードの全身からユラユラと魔力が溢れ出す。


魔力が安定して回り始めるとブロードは駆け出してオーガの足元へと辿り着く。

それを見てオーガは手に持った丸太を振り上げるがそれを振り下ろすのはもう少し先の事だ。


焦らないようにゆっくり、ブロードは拳へと魔力を集める。ブロードはまだ体の一部しか覆うことができないが、全身を包めるようになるのはそう遠くない。


拳を包む魔力に厚みが出来、しっかりとした形になる頃になってようやくオーガはその手に持った丸太を振り下ろし始める


そして丸太がブロードへと到達するよりも前に、ブロードの拳は突き出されたのであった。



ドム、という鈍い音が響き渡る。ブロードの拳には骨を砕くような確かな感触があった。

直後オーガの巨体は膨らませたボールのように軽々と宙を舞い、森に生えている木を見た限りで何本か巻き添えにしながら森の中へと消えていったのである。


もちろん本人がその威力を想定していたわけもなく、見ていた者達は口を開けて驚いた。


「えっと…どうしよう?」

森の中に消えるとは思っておらず、生死の確認をどうすべきか近くにいたジェイクへと尋ねると

「いゃ…あれは…なぁ……」

見ていただけででも致命傷だと推測できるが、森の中のどこまで飛んだかがわからない以上無理に捜索に入るのは危険を伴うし、そこまでの時間的余裕がある訳では無いので剥ぎ取りは断念しギルドへの報告のみとなった。



「で、ちょっと教えて欲しいのだけど?」

馬車へと戻ったブロードに、ニッコリと微笑むメフィアは目の力で説得をした。

「あれはですね、その、【ブースト】っていう魔法でしてはい…」


借りてきた猫のように小さくなるブロードを載せると馬車は再び動き出す。


「具体的には?」

「魔力を身体にめぐらさせる事で身体能力が上がるのです」

「漏れ出てたのはそういう事なのね」

「あっいえ、あれは扱いが下手だから溢れただけで本来は漏れることなく循環させる魔法ですはい」

メフィアの眼力に緊張しているブロード。


「それをいきなり実践で使ってみたと、そういう事ね?」

「はい…」

小さくなったブロードはさらに小さくなったようにも見える

「まず、覚えたばかりの魔法を使うにしても順序があるわよね?威力があったから良かったものの、効かなければそのまま叩き潰される事を考えて無かったの?死んでいたかもしれないのよ?そのあたりちゃんとわかってる?」

「はい…スミマセン」

「謝れということではないの。いい?今自覚しておかなければ今後同じように戦って、運悪くってことが起こりうるのよ?」

「はい…」

しゅん…とブロードは深く頭を下げる。

「実践の前には安全な場所で試す、いいわね?手紙が来ないと思ったら死んでいたなんてことにしないでよね?」

「ハイ。気をつけます」


しばらく沈黙が続いた後、

「私が言いたいのはそんな所ね」

メフィアはそう言ってどこか遠くを眺めるように視線をそらした


「言いたいことはあったがまぁ反省してんなら辞めておこう。覚えたからやってみるとは…やっぱりお前も男だな!」

ジェイクはハハハと笑いながら背中をバシバシと叩いた。


「終わったかい?じゃあ、少し聞かせてくれよ。アレって誰でも出来るのかい?」

メフィアの有無を言わさぬ無言の重圧が無くなると、ブロードへと、質問が投げかけられた

「魔力を扱えればある程度はできるかと。あとは訓練と素質次第って聞きました」

当たり障りのない範囲でブロードは答える。

「魔力を体の中で走らせるってことだよな?」

「えぇ、はい。基本的には魔力さえあれば使えると」

「で、これは広めて良いのか?」

「僕の名前が出なければ伝えていただいても問題ないです、はい。秘術でもありませんし」

「実際意識してやってるやつなんて居ねぇもんなぁ」

名も知らぬ冒険者がそんな事を呟いた


「おーい盛り上がってるところ悪いがそろそろだぜ〜」

馬車を操る行者が声を上げる。

「おっもうそんなにか」

それぞれがいそいそとギルドカードを取り出して検問に備える


ふと見上げるといつもと変わらない城壁が目の前に広がっていた…

誤字脱字報告は感想より。

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