迷宮、改築します
きりよく話をするべきか、文字数で同じくらいに区切るべきか…それが問題だ。と言っておけば言い訳ではない気がしませんか?
今回は少なめです
「ここは我のいた部屋の真上でな」
祭壇の裏にあった通路を抜けながら黒髪の少女フェリールは語り出す
「漏れ出た魔力を拾い集めたのが祭壇の上におった者なのじゃ」
通路の先の小部屋には迷宮の核があった。赤く光る結晶は1mほどの塊で台座に収められている
「隠れてないで出てこぬか」
フェリールが声をかけると台座の裏から骸骨が出てきた。羽織る外套はボロボロで骨もなんだか脆そうに見える
「迷宮の主の…なんといったか?」
とぼけたようにフェリールは尋ねる
「私は…エルドリヒです…」
もはや王を名乗る事もなく、威厳も感じられないとても弱そうな魔物となっていた
「我に仕えるならこの核は残さぬ事もないぞ?」
「この身は…貴方様のために…」
フェリールの前に歩み出たエルドリヒは片手を胸の前に当て、片膝をついて頭を垂れる
「うむ。夜王フェリールはこれを受け入れよう」
フェリールが手をかざすと黒色の魔力が広がりエルドリヒを包み込んでいった
彼を包み込んでいた魔力が身体に染み込むように消えていくと、中から現れたのは漆黒のコートに身を包んだ初老の男性であった。
銀色の髪はオールバックで整えられ、鼻の下には細く髭が生えている。
「ありがたき幸せ。感謝致します」
動作も様になっている
「これは眷属化というものなのじゃがな、零十の制約と似たようなものじゃ」
振り返るとブロードへ説明が始まる
「魔力を与え受け入れることで契約となり、万が一契約を破棄すれば魔力が戻ってくるのじゃが…戻る時にその者の魔力も奪っていくでな、双方の合意でもなければ命すら残らぬよ。じゃがなぁ…」
ブロードに背を向けるとエルドリヒをじっくりと観察するフェリール
「この姿はどう見てもお前さんに寄っておるんじゃよなぁ…」
「と、申しますのは?」
状況が掴めていないのはエルドリヒも同じだったらしい
「我に寄った姿であれば生身ではないはずなんじゃよ…いや?かつてはそうだったと言うべきかのぉ」
かつて眷属とした者は骨が黒く染まっただけなのだそうだ。
「街に入れるようになったと思えば悪いことではないかのぅ?」
検証はまた後日じゃ、と付け足した。
「さてとエルドリヒ。迷宮は生きておるな?」
その後迷宮と玉座をつなぎ、迷宮を居住区にするべく話し合いがおこなわれたのである
「魔王に会いに行くぞ!」
大まかな構造が決まり、これからどうしますかと尋ねるとフェリールはとんでもないことを言い出した。
「魔族の寿命は長いでな、聞けばヒロトの事を知っておるやもしれんからの!」
「聞いて…どうされるので?」
「決まっておる。会いに行くのじゃ!」
歴史の英雄に会いに行く。まずどうなったのかすら定かではない
「会うって…あぁ、お墓参りですか?」
フェリールは腕を組みふっふっふっと笑う
「あやつは死んでおらぬよ。この指輪が証拠じゃ」
「彼が死ぬと…どうなるんです?」
「この指輪が砕けるのじゃ。とはいえあやつも人の身…封印でもされておるのじゃろうて」
消えた救世主の生存。ブロードには信じられない話だ
「ただ会いに行くだけではすぐに終わってしまうからの、寄り道でもしながら行くのじゃ」
寄り道。その内容は旅をしながら説明するとフェリールは言う。
「じゃがその前にブロード。お前さんはギルドへお使いじゃな」
ニッコリと笑いながらフェリールはブロードへと向き直る
その後、拳ほどもある宝石を持たされたブロードは冒険者ギルドへと向かい何を言うべきか、何を言わないでおくかを念入りに教えこまれたのであった…
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