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毒牙の泉  作者: たまごいため
悪辣なる意思の萌芽
95/105

鬼ごっこ。

パパパパパパパン!!


 超高速のレーザーが空間を切り裂き、上空へと無数に照射される。白い羽がフワフワと舞い散るとともに、一斉に鷲の群れが地面に向けて落下してくる。


「どうやら、うまく行ったみたいだな。」

「一羽一羽の戦闘能力はそれほどでもなかった、という訳ですな。」

「炎壁が突破されたのが、地味にショックだぜ。」

「それ以前に僕は出番が無いんですけどー。」


 身内が色々脳内会議を開いている。まあ、兎に角ギュネシの魔術でここは乗り切ることが出来たらしい。

ドサッ、ドサッと周辺の台地に真っ赤なサークルを作りながら叩きつけられる鷲の群れを尻目に、私はクロノスに再度空間魔術を展開してもらい、蛇の大きさに戻ってから転移魔術陣の中へと踏み入れる。ま、足は無いんだが。


 一瞬の眩い光の後、移動したのは、どうやら洞窟の中。天井からは鍾乳石が生え、空気は湿って気温はかなり低い。魔素の濃度は、外に比べてかなり濃いみたいだな。

 私はピットを開いて敵の襲撃に備えつつ、魔素の濃度が濃い方へ、濃い方へと進んでいく。どうやら道は一本道のようで、2メートルほどの幅の石灰の廊下の両側は大きく落ちくぼんでいる。音を聞くに、水が流れているらしい。石灰岩を創り出している、この土地に湧き出す硬水だろう。

 それにしても、洞窟なのにもかかわらず、随分と明るいな。鍾乳石の先端が光っている所を見ると、何らかの発光性の生き物が住み着くなりなんなりしているのだろうか。


 やがて、魔獣に遭遇することも無く廊下は唐突に途切れ、眼前には巨大なドーム状の空間が広がった。そのだだっ広い空間にソレは忽然と姿を現した。


「やあ。」


 そいつは、何の警戒心も無く、話しかけてきた。

 だが、向こうが警戒しなくても、こっちは警戒する。何しろ、この空間に急に現れたのだから。

 その姿は、真っ白い毛を生やした、身長1mほどの猿。尻尾は長く、S字カーブを描いて頭の上でクタリと地面に垂れている。


“何者だ。”


 解っていても、一応私は問いただす。この封印の守護だろう。

 

「僕はトウテツ。初めまして。この空間に来たお客さんに、おもてなしをするように言われてます。」


 おもてなし、か。


“私はテレスタという。毒牙、竜巻、氷原、冥府の龍王を兼任している。そして、この時空の王の試練を受けようという者だ。試練があれば、の話だけれども。”


「あー、それについては僕も聞いてます。ここまで来たら、テストを受けてもらえって言われてます。」


“その、テスト、というのは?”


「テストは、鬼ごっこ。ルールは簡単です。無属性魔術のみを使って、僕に触れるか、傷つけるかしてみてください。それが出来れば合格、出来なければ不合格です。とはいえ、時間制限は無いから、不合格はギブアップの時だけかな。」


 右手の人差し指を立てて話すトウテツはどこか誇らしげだが、鬼ごっこて…。


“それは、今からでもいいんだな?”


「はい、いつでもどうぞ。」


 私はトウテツが喋り終わるや否や、空間転移でトウテツの背後に回った。

 楽勝!と思ってその硬そうな白銀の毛に触ろうとするが…


「わあ、凄いなあ。」


 振り向いたトウテツは、ニヤリと笑うと、瞬間でさっきまで私が居たあたりに移動している。

 なるほど、空間魔術の使い手。当たり前か、ここは時空を司るウロマノフ台地の封印、この位の事はやってのけるだろう。


「入り口のホワイト・ホーク達は全て倒してきたんでしょう?それなら僕の動きも捉えられるかもね?」


 あの白鷲はホワイト・ホークと言うのか。まんまだな。


“言ってろ!”


 次は空間転移で足元へ。視認できなければ、どうだ?


「あは、ワンパターンだなあ」


 そう言う声は上空から。見れば、5メートルほど上の何もない空間にトウテツが浮いている。


「マテリアライズ、っていうんだ、これ。空間に箱を創り出して、その上で遊んだりできるの。素敵でしょ?」


 ああ、それってそういう名前付いてたんだ。いつもは空間干渉障壁にしか使って無かったけど…そうか、上で遊んだりできるのか…


“ぼっち遊びで空間魔術使うとか、中々に泣けるな。”


「うるさいよ!やることないんだよ!」


 キィ!と空間で地団太を踏むトウテツ。地団太で、あってるのか?この場合。

 さて、空間転移ばかりでも芸が無い。こういうのはどうだ?

 私はクロノスにトウテツのマテリアライズを解除させる。


「あら?」


 自由落下を始めるトウテツ。その顔は喜色満面だ。「何をしてくれるのかな?」という期待に満ちている。


「クロノス!尻尾を固定しろ!」

「御意!」


 ガキン、とマテリアライズが発動し、トウテツの尻尾がビンッと伸びる。


「痛ッ!」


 と奴が叫ぶ間も無く、私はトウテツの上の空間に飛ぶ。これならどうだ!

 

「惜しい!」


 という声は、またも私の上から聞こえてくる。


“おいおい、空間固定で縛り付けた筈だが?”


「うん、僕、という空間を移動させれば、それも無効化できるでしょ?次はどうするのかなぁ?」


 ニヤニヤ、というトウテツ。私はと言うと、そのまま自由落下して、自分が固定した空間に着地した。

 こいつ…この試練、思ったよりずっと面倒かも。






 どのくらいの時間が経過したのだろうか?私はぐったりして、今は床に臥せって眠気と闘っている。


「どうしたのー?もうギブアップする?」


 チッ、暇人め。きっと800年遊び相手が居なくて、久々に動いたから楽しいのに違いない。

 まあ、そう思うとなんかちょっと哀れにもなってくるのだが。


「あ、なんか同情されてる?」


“ああ、800年も一人遊びをしてきたのかと考えるとな。”


 私は顎を地面にくっつけ、ぐったりと伸びながらそんな念話を送る。一日空間魔術を使いまくって、良い加減眠気に逆らえなくなってきてる。幸い、ここは魔素が充満しているから、魔素切れを起こすことは無いみたいだけど。


「煩いよ。っていうか僕が800年も一人遊びしながら待ってるわけないでしょ?入り口の魔術陣に反応があるまでは、眠ってたんだよ。君はこの空間の最初のお客さんってわけだね。」


“最後のお客さんでもあるんだがな。”


「それは君次第。でも、今の調子じゃ難しいかもねー?」


 また、このニヤニヤ笑いだよ。もうイライラもしてこない。それにしても、確かにこのままじゃ難しそうだ。私とクロノスの知っている限りの空間魔術は使ってみたが、まるでダメだった。人化して追いかけてみたり、果ては巨大化してこのドームごと壊しそうになったが…それでも触れることは出来なかった。今のところはお手上げだ…


「一つだけ、ヒントをあげよっか。僕にも使えない空間魔術があるよ。それを使えば、僕を捕まえることが出来る。」

 

 それは、つまるところ今まで私が使ってきた空間魔術とは別の何か、という事だろうか。うむ、眠くて良くわからない。


「ちょっと休んで、やる気が出たら言ってねー。僕は寝たりしないから、いつでもいいよ。」


 そう言うと、トウテツはゴロンと身体を横たえ、肘をついて頭を支えるような姿勢になった。

 ま、寝てる間に、なんてことが出来ないのは解ってたけどな。今日は、もうゆっくり休む事にしよう。この閉鎖空間じゃ時間感覚が全くないから、今日という言葉があってるのかも良くわからないけど。






 目を覚まして、トウテツを見やる。果たして、トウテツは私が眠るときと全く同じ、肘で頭を支える姿勢でこちらを見ている。

 あれ、本当に俺は寝てたんだろうか?時間、流れてるよな?


「おはよーさん、今日も元気にいってみよう!」


 トウテツに朝?一番の声をかけられ、何となく寝る前の事を思い出してゲンナリする。


“…ああ、おはようさん。”


「元気ないねー!起き抜けでそれじゃ、先が思いやられるぞう!」


“うるせー。寝起きが悪いんだよ。”


 とは言え、こいつを捕まえなければ話が進まない。昨日と同じ調子で突っかかって行っても、捕まえられないのは目に見えている。だとすれば、私に今出来るのは…家族会議か。


「皆の衆、聴いておくれ。トウテツを捕まえるには、どうしたら良いかの。」

「大将、どうしたんだその喋り方、疲れておかしくなっちまったか?」

「主よ、自棄になってはいけません。」

「そうだよー、まだまだこれからだよ。」

「…。」

「兄貴、ゆったり構えようぜー、時間はたっぷりあるんだ。」

「そうですぞ主君。我々はこうして考える時間があるのです。」


 私は少し感動している。皆有難う。救われた気分だよ。まあ、脳内会議で他の人格から支えられるってあまり良い画では無いが。

 それにしても、時間はある、か。


「みんな、有難う。だが、そんなに時間は無いぞ。他にも行かなければいけない所は沢山あるんだ。鬼ごっこばかりしてるわけにはイカン。」

「まあ、そもそもここ、時間の感覚無いしよ。」

「ねー、ほんとに僕らは眠っていたのかな?時間がまるで止まってるみたいだったね。」


 ん?マイヤ、今なんて言った?

 凄く大事な事、言わなかったか?


「…クロノス。」

「主よ、それはまだ試してはいませんが…。」

「ここの魔素だけで足りるか?」

「術式を組み上げてみましょう。何しろ時間は、ある。」


 私は頷くと、クロノスと一緒に並列思考に入っていった。新しい術式を完成させるのだ。


いつも有難うございます。

10月に入ってから急にPVが増えました。

みなさんお越し頂いて有難うございます!

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