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毒牙の泉  作者: たまごいため
第3都市アルダー
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ことが終わって。

 シーラに取りあえず連絡を取ることにしたテレスタ。通信器に魔力を通し、親器を呼び出す。


「あ、テレスタさん、お怪我は無いですか?」


 事情を聴いていたのか、親器で通話に応答したユマが心配してくれる。


「ああ、問題ない。私達全員が無傷だ。どころか相手方にも一人も死人を出さずに済んだよ。」


「それは良かった!流石テレスタさん、頼りになりますね。ところで、すみません、シーラ部長なのですが、ちょっと席を外していて…。」


「ああ、そうなのか。そうしたら伝言だけお願いできるかな?タリンの太守及び衛兵は太守の館で捕縛してある。それから、どうやらタリンのギルド職員は全員が軟禁状態だったみたいで、今は彼らが見張りに着いていてくれているから急がなくても大丈夫そうだ。ギルドまでグルで活動していたのかと疑っていたが、どうもそうじゃ無かったみたいで良かった。」


「うーん、タリンてついこの前までは落ち着いたいい街だったんですけどねぇ。どうしてそうなったんでしょ?でも太守が交代したらまた風光明美な街に戻ると期待しましょうか。用件はシーラ部長に伝えておきますね。」


「有り難う、では、またアルダーに到着したら連絡するよ。」


 テレスタはそういって通信を切る。


 事後処理は山ほどあるのだが、殆どすべてをタリンのギルドにお任せすることが出来そうで、取りあえずホッとするテレスタ。タリンのゴタゴタで何日も拘束されたのでは、何をしに来たのか解らない。

 そう思っているテレスタの下に、つかつかと歩み寄ってくる影が。黒い髪の毛を方のところで切りそろえた、快活そうな女性だ。


「テレスタ様、私はこの町のギルド総統をしております、セイラムと申します。この度は、タリンの危機を救って頂いて、本当に有難うございました。」


 セイラムは頭を深々と下げる。テレスタは少し照れくさそうに右手で頭をかきながら応える。


「いいえ、自分自身が閉じ込められたので、まあお灸をすえてやろうと言いますか、そんなに褒められた動機でもないですから、お礼など勿体ないですよ。」


「とんでもない!あなた様のお蔭でどれだけの多種族の人々が救われたことか…その、宜しければ、この町であなた様の功労を称える式典を開きたいと考えておるのですが。ご参加いただけませんか?」


 テレスタは事後のことなど何も考えていなかったが、ものすごく立場が上がってしまったらしい。困ったなぁ、と思いつつ、丁重にお断りを申し上げることにする。


「大変有り難いお申し出なのですが、私どももアルダーでやらなければならない事がありまして…その、今回は辞退させて頂ければと。」


 やんわりと断りを入れるが、セイラムも食い下がる。


「し、しかし、この町の救って頂いた英雄に、何の式典も褒章もお出ししなかったとなれば、王都にも顔向けできません。何卒、私どもにお時間を頂ければ…。」


 うーん、困ったな。だが、確かにここで私が断ってしまってはきっとタリンの沽券にもかかわることになるのだろう。仕方ない、か。


「解りました、こうまでしてお誘い頂いたのに、お断りするのは野暮というものです。お言葉に甘えて、式典まで暫く滞在したいと思います。」


 そうすると、妙齢のギルド総統はパァッと顔を輝かせて、


「有難うございます!良い式典になるよう、私どもも全力でおもてなし致します!」


 と、嬉々として応えていた。ぬう、彼女はパリッとした雰囲気の中に可愛らしい部分が見え隠れして、中々侮れん…。 ゲシッ!


「痛ッ!」


 気付くとカーミラとオリヴィアに左右のつま先を踏まれていた。「?」顔に疑問を浮かべるセイラム。彼女に気付かれないように踏みつける辺り、流石である。


「い、いや、何でもありません。私どもも楽しみにしておりますよ。そ、それでは。」


 どもりながら挨拶をするテレスタに、「はい!」と答えるセイラム。良かった、ごまかしきれたようだ。にしても、この後はまた正座かなぁ。






 数日後、ギルドと街が総出で式典の準備を整えてくれたため、立派な会場が設営された。シーラからの連絡がスムーズに行われたこともあって、王都方面からの査察団も訪れている。


(いやはや、思ったよりも盛大な式典になってしまったな。)


 これでは王都でもそれなりに顔が売れてしまうかも知れない、などと心配になってしまう。人間族との繋がりが濃くなりすぎると、動きがどうしても遅くなる。東の封印が解ける時期は杳として知れないし、今はそういった王侯貴族との長たらしい付き合いはなるだけ避けたい。首輪付きになってしまえば自由な身動きはさらに制限されてしまう。

 いらぬことを考えていると、査察団の団長がにこやかに挨拶をしにやってきた。


「これはこれは、テレスタ様でいらっしゃいますな?私、王都から参りました査察団の団長をしております、スティグリッツ・メイウェザーと申します。このたびは王都方面で暗躍している人身売買のシンジケートを抑えて戴き、誠にありがとうございます。」


「いえ、私としては、そのシンジケートに仲間ともどもつかまっておりましたから、自分たちでできることをしたまででして。」


「また、ご謙遜を。聞けばかなりの高等な魔術も扱われるとか。今後の活躍とも、期待しておりますぞ!」


「恐縮です。」


 慣れないやり取りをこなしていく。そういえば、メイウェザー家って、かなりお偉いさんじゃなかったか?もしかしたら王都の警備などを任されている家柄なのかもしれないな。付かず離れずが良いか。王都方面で行動を起こす予定は今のところないからな。仲が悪いと面倒だが、今のところは彼らの活動に貢献できたと云う事で、悪い方向には動くまい。


 式典では、街を代表する太守本人が捕まってしまったため、太守代理が王都から派遣され、口上を述べている。亜人の差別運動はどうやらここ1年ほどで急に拍車がかかった事だったようで、あまりの急激な変化に住民もかなり神経質になっていたようだ。大半は今回の件が収集されて胸をなでおろしているところだという。まあ、ここでも人を救う、なんて大儀が多少は果たせたのだろうか。

 太守代理から紹介を受け、貴賓席で立ちあがると、会場全体から盛大な拍手で迎えられる。いや、まさかここまで大きな反応を受けることになるとは。拍手をしてくれている中には住民をはじめ、つかまっていた亜人達も多く含まれ、なかなかに良いことが出来たのだな、などと今さらながらに感慨が湧いてくる。動機がどうあれ、結果が大事だというわけだ。


「このたびは、前任太守の暴挙を暴き、よくぞこの街の住人とその名誉を守ってくださいました。テレスタ殿にはこの街を代表して、また、王都の行政の代表としても、厚く御礼申し上げます。有難うございました。」


 太守代理の言葉をうけ、深々とその場で一礼をして着席する。感謝は受け取った。褒賞なんかも後ほど少し戴けるらしい。船旅のベッド代は回収できたかな?などと下世話な考えをしてしまうあたり、テレスタは庶民派と云う事なのだろう。






 あくる朝、テレスタ達はアルダーへ向けて出発準備を整えた。タリンの門前には、新しく配備された衛兵たちのほか、セイラムや太守代理、それにスティグリッツ卿の姿も見える。本当に、こんなに大物扱いされるべきでも無いのだがなぁ。と思っていると、セイラムから声をかけられる。


「皆様、このたびは本当に有難うございました。また、アルダーまで道中お気をつけて。」


 太守代理の表情も柔らかい。


「また、タリンも新しい体制で心機一転、活動してまいります。皆様もまた是非お立ち寄り下さい。英雄の皆様を、歓待いたしますよ!」


「今回の件は王城にも報告が上がります。結果は、モレヴィア・ギルドを通してご連絡致しましょう。また、どこかでお会いしましょう!」


 スティグリッツ卿はやけに爽やかで砕けているな。本当にお偉いさんなのだろうか?テレスタは疑問に思う。


「有難うございます。また、帰路にこちらに寄らせて戴きますから、その時お会い致しましょう。」


 簡単な挨拶で済ませ、カーミラとミスティの風の付与を纏う。強大な魔術の顕現に、一瞬見送りの面々が息をのむのが解る。


「す、すごい、まさかこれほどとは。」

「聞きしに勝る魔術ですな。」


「では、皆さん、失礼致します。」


 そう断りを入れると、テレスタ一行は一路、アルダーを目指して北上を開始した。



 

いつも有難うございます。

運動した後は、文章が進みやすいみたい。

ビジネス書のうたい文句じゃないですが、

シャワーの後と、運動後の執筆はなかなか効果的かも?

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