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毒牙の泉  作者: たまごいため
パラ大平原と亜竜
54/105

雷電変化。

「ぐ、が、あ」


 苦悶の表情を漏らすミスティ。だが高速移動は続けたままだ。【ゲレル・マグナ】の直撃を受けておきながら、まだ目は死んでいない。そして弾幕を突き抜けて止まった彼女の右肩から、鮮血が噴き出しているのが見えた。


「なんて、とんでもないモン隠してやがるんだ…これが龍王…」


 ギリリ、と奥歯を噛みしめる音が聞こえてきそうなほど、歯を食いしばるミスティ。右肩から生えていた3枚の翼のうち、2枚は引きちぎれ、右肩にも浅からぬ傷が生じていた。直撃の直前に右半身の龍鱗を硬質化させたのだろう。まだ右腕は死んでいないようだ。


「あの高速の攻防の中で、直撃を免れるのかよ。」


 私は思わず悪態をついた。確実に仕留めるために練った術式だ。弾幕もこれでもかと張った。だが、そこを奴は乗り越えてきた。確かなダメージを刻んだが、連発の出来ない強力な魔術で仕留めきれなかったのは痛い。私は素早く2の矢を放つ。


「アグニ!敵の座標に【ブレイズ・ウォール】展開!」

「了解だ!」


 攻撃型炎壁【ブレイズ・ウォール】敵の現在の座標周辺を球状に覆う炎を展開し、敵を焼き尽くす。球の内側は激しい酸欠と高温ですべてが灰になる。 ゴッバオオオン! 空中に突如として現れた炎の球体がミスティを包み込もうとその口を閉じるが…


「うおおお!しゃらくせぇ!!!」


 ミスティは身体から竜巻を発生させながら炎壁を突破。距離を取るかと思ったが、拳を構えてそのまま突っ込んできた!ほんとにバトルバカなのか!

 そして、今回は角度が違う。頭狙いで来たか!


「マイヤ!相手は首狙いだ!胴体は無視して、首回りに水壁を集中しろ!」

「わかったよ!」


「くーたーばーれーぇえええええええええええええええ!!!」


 水壁発動とほぼ同時、ミスティは重症を負っている筈の右腕を大きく振るい、今までとは比べ物にならない巨大な風刃を叩きつけてきた!その大きさは左右の刃渡りが30メートルにも及ぶ!


バッシャアアアアア!


 水壁がぶつかって弾ける音、そして、


「がああああああああああああ!」

「なっ、馬鹿な!」

「お兄ちゃん!」

「アグニ!!」


 威力を相殺しきれなかった水壁を突き抜けて、風刃が直撃!アグニの首から上が、ブッツリと切り離される!こ、こんなことが、あってたまるか!?


“大丈夫だ、大将、俺たちは魔素の塊だ!それより前見ろ!”


 魔素に分解され光の粒子を散らしながら、私に念話を送ってくるアグニ。そ、そうか、一瞬死んだかと思ったぞ。じゃ、無くて、前…


「らあああああああああああああああ!!!!!!」


 水壁を突き抜けてきた亜竜はその左拳を、私に叩きつけてきた!刹那、


ガアアアン!

「ぐげ!」


 衝突音とともに一瞬、前後不覚になる。頭がグワングワンとなり、天地の境も解らない。強力な強化毒膜を張っていたのにもかかわらず、それを突き抜ける打撃の破壊力。ホントにこいつ何なんだ。むしろ褒めてやりたいくらいだ。どこにその力がある?

 私の指示を待たず、ウダルが自らの首をフルスイングし、ミスティに叩きつける。風の付与が水壁との摩擦で弱まっていたのか、その直撃を受けたミスティは遥か左へと吹き飛んでいく。


ズザアアアアアア…


 地面に擦れる音。亜竜はどうやら左腕もダメージを追い、すでに怪我を追っていた右腕はウダルの頭突きで完全に折れ、使用不可能になったようだ。私もようやくガンガンとしていた頭が治まりはじめ、意識がはっきりしてくる。

 奴の吹き飛んでいった方へと視線を移すと、ゆらりと立ち上がり、ボロボロの身体に満面の笑みを浮かべるミスティの姿が。


「ああ、あんた、本当にいいよ。アタシの命を、ここで使い切る。これが、最高の、命の使い方だ。」


 痛みを、感じないのか?一体、こいつの底力はどこから…いや、今はいい。それよりも、こいつを倒す事。そして、死なれたら情報が引き出せない。何としても奴を殺さずに、決着をつけることだ。


「お前に死なれちゃ、ここまで来た意味が無いんでな。」


 次に打ってくる一撃が、恐らく奴の渾身の、全身全霊の一撃となるだろう。その性質を見極め、こちらも極大魔術で対応するほかない。魔素が切れてしまった後は…カーミラに何とかしてもらおう。まだ霊水もいくらか残っていた筈だ。

 瞬間、ゾワリと悪寒が襲う。言わずもがな、ミスティが最後の攻撃に乗り出した。


「撃たせるか!ギュネシ!」

「あいよぉ!」


 ギュネシは単純な光線を止まったままのミスティに打ち出す。光速のそれは今のミスティでは避けることも敵わないだろう。しかし、


ズドン


 光は彼女を貫き、後方の地面を焼くが、彼女自身には何の変化も見られない。


「ほへ?」


 ギュネシが気の抜けた声を漏らす。でも気持ちはわからんでもない。今のは私にも全く理解できなかった。もう一発撃つべきか?いや…

 逡巡している間に、周辺の空気の異変に気付く。何かが、張り巡らされている。こう、ビリビリとした、雷のような…これが、ミスティの、術式か?


「【雷電フルミネ・変化アルテラツィオーネ】アタシの固有術式さ。まあ、身体が壊れるから使えるのは一瞬だがね。この瞬間に全ての魂を燃やすことに決めたから、冥土の土産に見せてやるよ。」


 パチンッ


 弾けるような音とともに、ミスティの姿が消えた。次の瞬間、


 ドパッ


 ウダルの首に風穴が空き、激しく魔素が漏れ出している。これは、電撃、なのか?


「クロノス、空間干渉!」

「御意!」


 クロノスが空間干渉障壁を展開しようとするも… 斬!

光速で飛来する何かに切り裂かれ、そのクロノスの首が飛ばされる。


“主よ…これは、電撃です。電撃による…光速の…”


 その念話を聴くや否や、対応が決まる。


「マイヤ!私たちを中心に、ありったけの水の干渉を創り出せ!」

「わ、わかった!」


 テレスタは自身でとぐろを巻く。その間に、マイヤが巨大な、信じられない大きさの水球を身体全体に展開していく!その間も、身体のあらゆるところを抉られるテレスタ。しかし、何とか術式の展開は完了。大量の水の中に血液と魔素と毒を垂れ流しながら、テレスタはここで勝負が決まると確信する。

 次の瞬間、


パアンッ バリバリバリバリ!!


「ぐ、ああああ!マイヤ、魔素の底まで、水球を拡大し続けろ!」

「うわああああ!」


 マイヤの創り出した水球に伝わる雷撃。しかし、その雷撃を上回る水量ですべて散らすことが出来れば、それまで耐えられればこちらの勝ちだ!


バリ、バリバリバリバリ…。






 一体どれだけの間、感電し続けたのか。身体全体が悲鳴を上げる。それがやがて弱まり、心地よい振動に変化するほどまでになったところで、水球の拡大は止まった。そして、その水球の中央には、とぐろを巻いた私と、その上に仰向けに浮かぶ金髪の女性。


ザバアアアア、ゴボゴボゴボ○o。.


 術式を開放すると、水が四方へと流れて行く。ミスティは私の背中に乗せた状態で受け止めた。右腕は無残に折れ、左腕は大量に出血して、気絶している。私の方は、アグニとクロノスの首が千切れ、ウダルの首に大穴が空き、体中に裂傷。もはや、どちらが勝ったのか解らない。

 それでも、ミスティを殺さずに何とか勝利できたのは僥倖だろう。こいつには、聴きたいことが山ほどあるのだ。


「テレスタ!」


 私達の戦いを遠くから見守っていたカーミラが、霊水を抱えてやって来た。


「カーミラ、すまない、すぐに霊水をかけてくれ。クロノスが復活しないと、こいつを回復できない。」


「もう、こんなにボロボロになって…本当に、心配したんだからね?」


 涙目で見上げてくるカーミラを見て、流石に言葉に詰まってしまう。今回は私も本当に無理をし過ぎた。


「ああ、すまなかったな。心配をかけた。今後はもう少し気を付けるよ。」


「ええ、約束よ。…こんなの何度もされたら、私だって見るのが辛くて、耐えられないんだから…。」


「ごめんなさい。」


 謝る私に、カーミラは涙目ながらもフッと微笑んで、霊水をかけてくれる。うん、いい仲間を持った。私は幸せ者なのだろう。

 さあ、クロノスが本格的に回復したら、ミスティに色々聴かないとな。





いつも有難うございます。

雷電変化、ってセガサターンの某6人プレイゲーム、

からなんですよね。何か気に入ってて、いつかどこかで使いたいなぁと思っていたのです。

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