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打倒!風紀委員会

学園モノ。少年と風紀委員会の戦い?

 ここに、1人の少年がいる。自らの信念に全てを賭け、それを曲げることのない少年が。何があっても自らの想いを曲げない少年。何があっても屈さない少年。彼は名を知られた存在であった。そう、彼の名を知らぬモノは、ここにはいない。



 少年の名は、白波巧しらなみ たくみといった。



「だから俺はやってないんだ!」

「貴方の場合、何もやっていないのがかえって迷惑です。」

「髪染めもパーマも禁止だろうが!俺はどっちも守ってるぞ?!」

「その金髪とウェーブのかかった髪で何を言うんですか!」

「これはただの先祖返りと天然パーマじゃボケぇぇっ!!!!!」


 毎朝毎朝行われる、校門前での会話。白波巧VS風紀委員会の日課である。黒字に金ボタンという古風なデザインの学ランのこの学校において、華美な装いというのは須く校則の名の下に消滅させられる。その中で、彼だけが異質であった。ただ単に、全ては元から持っている素養であるだけなのだが。だがしかし、それを見逃すような風紀委員会でないのが、この学校の特徴だった。

 開祖に秘密警察マニアでもいたに違いないと思わせるような、明らかに時代錯誤な風紀委員会なのである。いまだに校門前で毎朝チェックをするマメさといい、全ての生徒に点数制を浸透させている辺りといい、充分明らかに間違っているような形の風紀委員会だが、とりあえずこの学校の面々はそれを特苦いとは思わずに生活している。

 巧以外は。


「たーっくみ。」

「んが?!」

「ハイハイ、委員長。朝礼に遅刻するとヤバイので、巧は引き取らせて貰いますぜぇ?」

「……四方谷しほうだに……。」


 ぴくりと風紀委員達の顔が引きつったのを見ていながら、彼はにこやかに微笑みを浮かべながら、巧の身体を引きずって去っていった。金髪に天然パーマの巧と違い、黒髪ストレートの短髪である。模範生のような外見をしていながら、そのオーラが常人では有り得ない男・四方谷(つばさ)。巧の幼馴染み兼ブレーキ兼親友という、非常に面倒なポジションにいる男である。

 ズリズリと巧を引きずりながら、翼はやれやれと肩を竦めた。自分が引きずっている巧に向けて、のほほんとした口調で話しかけるのだから、彼は強者だ。そう、強者なのだ。風紀委員会の減点シールを恐れない辺りで、彼は強者だった。ちなみに、そのシールをためすぎると単位を落とす可能性もある。だがしかし、彼は無敵の生徒会長様だったので、その辺オールオッケイなのだ。


「お前さぁ、いい加減止めたら?」

「何で俺が止めなきゃいけないんだよ!うちは親父も俺と同じ頭だぞ?!」

「で、お前の親父さんも高校時代に散々風紀委員会と揉めたって言ってたじゃねーか。」

「翼の親父さんが助けてくれたって話もしてた。」

「俺は親父ほどお人好しじゃねーのよ。」


 はっはっはと軽やかな笑い声を立てておいて、彼はにこやかに援護を拒絶する。四方谷翼、彼は面倒ごとは大嫌いという、異質な生徒会長様である。俺は負けない、と巧が拳を握りしめて力説する。その言葉を聞いて、やれやれと彼は溜め息をついた。


「そうか、巧。お前は負けないんだな?」

「当たり前だ。」

「良し、なら行ってこい。教室前に風紀委員勢揃いだ。」

「…………フ、群れてしか行動できない無能共め。俺の決意を変えることができるのは、向こう半年分のお小遣いアップ以外にはない!!!!!」

「…………お前、又ハハオヤと喧嘩したのかよ……。」


 フハハハハハと高らかな声を上げて風紀委員に突撃をかける巧の耳には、呆れたような翼の声は聞こえていなかった。矢継ぎ早に繰り出されるマシンガンの集中砲火のような風紀委員達の言葉も、彼にとってはのれんに腕押し、糠に釘。まったく持って効果がなかった。



 なぜなら巧は、その全てを右から左に聞き流しているのだ。



 それが彼が会得した奥義であった。相手が何を言おうが、自分が聞き流せば終わる。聞かなければいいわけである。木々のざわめき程度に認識していれば、巧自身は何も迷惑は被らない。周りが迷惑を被ると言うことを、彼は綺麗さっぱり無視しているが。そういう性格なので、この際それは我慢して貰おう。


「風紀委員会も、諦めればいいモノを……。」

「できれば苦労しないんじゃないの?」

「お、いたのか、ちから。」

「うん、いた。あのバカ、まだやってるんだ?」

「ま、先生来るまでやってるだろうなぁ。」


 ひょっこりと姿を現した黒髪の少年を見て、翼は笑った。彼の名は、白波力。すなわち、巧の双子の弟なのである。幸いなことに二卵性だった為、彼は見事な黒髪ストレートである。ハハオヤの遺伝子を頂いたらしく、兄のような煩わしさとは無縁だ。

 バカとしか言い様のない風紀委員と巧の遣り取りを見て、二人は顔を見合わせて笑った。笑うしかなかった。飽きることなくかれこれ一年近くこれを続けているのだ。ある意味快挙といえよう。


「根性あるよな、風紀委員会も。」

「っていうか、アレはただ単に意地になってるだけだと思う……。」

「まぁ、そうともいうか。」

「ところで翼、英語の宿題やった?」

「あぁ、やった。何だ、ノートか?」

「うん。写させて。」

「了解。」


 そんな和やかな会話を繰り広げる翼と力。だがしかし、彼等の前では闘いはまだ続いているのだ。無視することに決めた彼等が視覚と聴覚から排除しただけで。



 巧が風紀委員会を倒す日も近い、かも知れない………………。



FIN

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