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第90首 破局後の生
われながら しらでぞすぎし わすられて なおおなじよに あらんものとは
雑踏の中にあの人の顔を見つけて、心臓が止まる思いだった。
昔の恋人。
あの人と別れて、捨てられて、どのくらい経つんだろう。
離れたら死んでしまうに違いないと、そんな風に思っていたあの恋の終わりから、時は移り、その移り変わりの間、わたしは知らないで過ごしてきてしまったんだ。
いまなお、わたしが、あの人と同じ世界に生きていたということを。
【ちょこっと古語解説】
○で……打消接続を表す接続助詞で、「~しないで」の意。
我ながら知らでぞ過ぎし忘られてなおおなじ世にあらんものとは(続後撰和歌集)




