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第9首 雨を見る日
おきもせず ねもせでよるを あかしては はるのものとて ながめくらしつ
(在原業平)
きみを想う夜。
はっきりと起きることも、かと言って寝ることもできず、いつしか夜は明けた。
気がつくと、春の朝にしとしとと雨が降る。
それを眺めて、もの思いにふけりながら、その日一日を過ごしてしまったよ。
【ちょこっと古語解説】
○で……「~しないで」の意。
○ながめ……この語には二つの意味が掛けられている。一つは、長雨。もう一つは、眺め。「長雨」は、その通り、長く続く雨。「眺め」の方は、「眺める」とともに、「もの思いにふける」という意もある。
起きもせず寝もせで夜を明かしては春のものとてながめくらしつ
(古今和歌集)