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第84首 黒髪で涙を
おさうべき そではむかしに くちはてぬ わがくろかみよ なみだもらすな
成らないあなたとの恋に、ふと流れる涙。
その涙を抑えるために使うはずの袖は、昔むかしに朽ち果ててしまいました。
どれだけの涙を流したことでしょう。
そうして、これからどれほどの涙を流すことになるのでしょう。
今はもう、袖の代わりにこの髪で、目元を抑えるしかありません。
ああ、わたしの黒髪よ、どうか涙を漏らさないようにね。
【ちょこっと古語解説】
○おさう……押さえる。
○べき……元の形は、べし。「べし」は色々な意味があるが、ここでは「当然」の意。訳は、「~するはずだ」くらい。
○ぬ……「~してしまった」という完了の意を表す。
おさうべき袖は昔に朽ちはてぬ我が黒髪よ涙もらすな(続後撰和歌集)




