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第83首 消える想い
しられじな ゆうべのくもを それとだに いわでおもいの したにきえなば
夕暮れどき、雲が紅く染まっている。
それは、まるで、わたしの心のよう。
あなたを思って華やかに色づいている。
でも、この気持ちを知られることはないだろう。
口に出さず、消えるにまかせてしまうなら。
【ちょこっと古語解説】
○じ……「~ないだろう」という、打消推量をあらわす。
○だに……「~さえ」の意。
○いわで……「で」は、「~ないで」という、打消接続を表すので、全体で、「言わないで」くらいの訳。
○なば……「~してしまったら」の意。
しられじな夕べの雲をそれとだにいわで思いの下に消えなば(続後撰和歌集)




