82/297
第81首 春夢の約束
あわれあわれ はかなかりける ちぎりかな ただうたたねの はるのよのゆめ
うたたねに幸せな夢を見て、目覚めたのは春の夜。
一人寝に似つかわしくない華やいだ闇の中。
ああ、とついたため息の軽さ。
あの人の約束のたよりなさ。
【ちょこっと古語解説】
○あわれ……何かに感じ入ったときにつくため息の音。かわいそう、という意味ではない。
○はかなかり……元の形は、はかなし。頼りない、むなしいの意。
○契り……単なる約束の意もあるが、この歌では、男女の間の恋の約束のことを意味する。
○うたたね……思わず、うとうとすること。
あわれあわれはかなかりける契りかな唯うたたねの春の夜の夢(新勅撰和歌集)




