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第80首 現実を夢に
つらきをも うきをもゆめに なしはてて あうよばかりを うつつともがな
この頃の彼女の態度に情が無くて、そのせいで心が晴れない。
あれほど想い合っていたのになあ。
今の全てを夢にしてしまって、一緒に過ごしたあの夜だけを現実にできたらいいのに。
【ちょこっと古語解説】
○つらき……相手の態度が薄情であること。元の形は、つらし。
○憂き……心が晴れ晴れとしないこと。元の形は、憂し。
○逢う……単に会うだけではなく、会って一夜を共にすることまで含む。
○うつつ……現実のこと。
○もがな……「~であればなあ」という願望の意。
つらきをも憂きをも夢になしはてて逢う夜ばかりをうつつともがな(新勅撰和歌集)




