77/297
第76首 面影はまだ
ちぎりしに かわるうらみも わすられて そのおもかげは なおとまるかな
「ずっと一緒だよ」
そう約束してくれたきみの心変わりを、ぼくはどれほど恨んだか知れない。
本当に辛かった。
でも、不思議だね。
今ではもうその時の恨みも辛さもすっかりと忘れてしまって、きみと過ごした素晴らしい日々だけを思い出すんだ。
目を閉じると、まぶたの裏にまだ、きみの笑顔が鮮やかに映り出す。
【ちょこっと古語解説】
○契りし……「契る」は、約束する、の意。「し」は、過去を表す。全体で、約束した、くらいの訳。
契りしにかわる恨みもわすられてその面影はなおとまるかな(新勅撰和歌集)




