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第70首 物思いの種
ひとしれぬ うきみにしげき おもいぐさ おもえばきみぞ たねはまきける
人知れず辛いぼくの身は、もの思いであふれている。
どうしてこうもの思いが多いのか、人にもの思わせる思い草がぼくの周りに生い茂っているのか。
考えてみたところ、その種をまいたのはきみだったことに気がついたよ。
【ちょこっと古語解説】
○ぬ……元の形は、ず。「~ない」という打消の意。
○憂き……元の形は、憂し。つらい、の意。
○思い草……一説にナンバンギセルのこととか。頭を垂れるようにして咲く姿が、何かを思い悩んでいるように見える。
人知れぬ憂き身にしげき思い草おもえば君ぞ種はまきける(新勅撰和歌集)




