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第69首 自らを恨む
うらみじな なにわのみつに たつけぶり こころからたく あまのもしおび
きみのことを恨んでいるわけじゃないんだ。
だって、きみのせいじゃないんだから。
まるで藻塩火のようにぶすぶすと燃えるきみへの気持ち。
この気持ちに苦しめられたとしても、それはそういう気持ちを持ったぼく自身が悪いのだから。
【ちょこっと古語解説】
○じ……「~しないようにしよう」という打消意志を表す。
○難波……現在の大阪市およびその付近。
○御津……津は「わたしば」を表す。津のつく地名を思い起こしてみよう、そのほとんどが川や湖の渡し場や海の港のハズ。御は敬称、難波の津が皇室の港だったことから敬称をつける。
○海人……漁師のこと。男女どちらも表す。
○藻塩火……塩を取るために海藻を焼く火のこと。恋人への燃えるような思いをイメージさせる。
恨みじな難波の御津に立つけぶり心からたく海人の藻塩火(新勅撰和歌集)




