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第7首 恋心上の空
さつきやま こずえをたかみ ほととぎす なくねそらなる こいもするかな
(紀貫之)
さつきの山は鬱蒼として、緑なす葉にしとしと雨が。
木の梢が高いところにあるので、とまったほととぎすの声も空まで響くよう。
その空にわたしの心もふわりと浮いて、全然、地に足がつかない。
これは恋をしているからかな。
【ちょこっと古語解説】
○さつき……第1首に同じ。陰暦(昔のカレンダー)の五月。今だと六月くらい。梅雨の季節である。ちなみに、「さつき晴れ」とは梅雨のたまにある晴れ間のことで、今の五月の晴れのことではない。
五月山木末を高み時鳥鳴く音空なる恋もするかな
(古今和歌集)