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第61首 命絶えても
たまのおよ たえなばたえね ながらえば しのぶることの よわりもぞする
わたしの命。
なくなってしまうなら、なくなってしまえばいい。
生きながらえることによって、秘め隠そうとする気持ちが弱ってしまうことが怖い。
この恋は誰にも知られてはいけないのに。
【ちょこっと古語解説】
○玉の緒……本来は「玉を貫いた緒」のことだが、「魂を身体につなぐ緒」の意に転じ、命を表す。
○絶えなば絶えね……「な」と「ね」は、ともに「ぬ」の変化で、「完了」を表す。「ね」は命令形。「ば」は、「~ならば」という仮定を表すので、全体で、「絶えるなら絶えてしまえ」くらいの訳。
○ながらえば……「ながらう」は、「生きながらえる」の意。「ば」は「~ならば」を表す。全体で「生きながらえたら」くらいの訳。
○忍ぶる……「忍ぶ」の変化。「我慢する」の意。
○よわりもぞする……「もぞ」は「~したら困る」という心配の気持ちを表す。全体で、「弱ったら困る」くらいの訳。
玉の緒よ絶えなば絶えねながらえば忍ぶることのよわりもぞする




