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第60首 一度だけの
なにわえの あしのかりねの ひとよゆえ みをつくしてや こいわたるべき
芦の根のひとふしのように短い、一夜だけの恋。
旅先の宿で抱かれ、それは一度だけのことで、二度目はありません。
だからこそ、澪標のようにこの身を尽くし、あの人を想い続けることになるのでしょうか。
【ちょこっと古語解説】
○難波江……今の大阪市中心部あたり。当時、水深の浅い海や、低湿地が広がっていた。
○かりねのひとよ……「刈り根の一節」と「仮寝の一夜」の二つの意味が掛けられている。「刈根」とは「刈り取った根」の意。「仮寝」とは、「旅先での仮の宿り」のこと。
○みをつくし……「澪標」と「身を尽くし」の二つの意味が掛けられている。澪標とは、船の航行の目印に立てられた杭のこと。
○わたる……元は「移動する」の意だが、「~わたる」で「~し続ける」となる。
難波江の芦のかりねのひとよゆえみをつくしてや恋いわたるべき




