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第59首 責任無き月
なげけとて つきやはものを おもわする かこちがおなる わがなみだかな
白々とした光に照らされて、空を見上げると、月が大きい。
なんとはなし、うまくいっていない彼女とのことが思われる。
ふと浮かんだ涙。
月のせいにしたいけれど、「恋を想って泣け」と月が命じたわけではないのだ。
【ちょこっと古語解説】
○とて……「と言って」「と思って」の意。
○月……現在のお月見習慣からは想像がしにくいが、古代は、月を見ることは不吉なことであるという考え方もあった(もちろん、お月見自体も楽しまれていたが)。
○やは……「~だろうか、いや~ではない」という、反語の意。
○かこち……「かこつ」で、「他のせいにする」の意。
嘆けとて月やはものを思わするかこち顔なるわが涙かな




