第6首 燃える想い
ゆうされば ほたるよりけに もゆれども ひかりみねばや ひとのつれなき
(紀友則)
月の隠れた暗い暗い夏の夕べ、雨上がり、風がやみ。
ぽつんぽつんと現れた金色の光に、あなたは見惚れたまま。
わたしの方を全然見てくれない。
ちょっとでも見てくれれば分かるのに、あなたのことを思って、蛍なんかよりいっそう、わたしの心が燃えていることが。
見ないから、わたしに無関心でいられるんだ。
【ちょこっと古語解説】
○夕されば……「夕方になると」の意。
○けに……「いっそう」の意。
○見ねばや……「ばや」は第5首のものとおんなじで、「~だからだろうか」の意。「見ね」の方は、ちょっとお勉強的になりますが、「見る」という動詞の未然形「見」に、「ず」という打消しの助動詞の已然形である「ね」がくっついている形で、「見ない」という意味になります。全部で、「見ないからだろうか」くらいの訳。
○人……「恋しいあの人」の意。第5首に同じ。
【ちょこっと背景解説】
この和歌を詠んだのは紀友則という男性だが、和歌のテーマはつれない恋人を待つ女心。
夕されば蛍よりけに燃ゆれども光見ねばや人のつれなき
(古今和歌集)




