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第58首 もの思う夜
よもすがら ものおもうころは あけやらで ねやのひまさえ つれなかりけり
一晩中あの人のことを想う。
そうしていると夜は長くて、なかなか明けない。
早く明けてくれればいいのに。
寝室の戸が少し開いていて、それ以上開かないことにイライラ。
あの人だけじゃなくて、寝室の戸にまで冷たくされているみたい。
【ちょこっと古語解説】
○夜もすがら……一晩中。
○もの思う……冷淡な恋人のせいでもの思いをすること。
○で……「~ないで」の意。
○閨のひま……閨は寝室、ひまは隙間。寝室の戸の隙間のこと。
○さえ……「~まで」の意。現代語の「さえ」とは別。
夜もすがらもの思うころは明けやらで閨のひまさえつれなかりけり




