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第57首 心体の違い
おもいわび さてもいのちは あるものを うきにたえぬは なみだなりけり
きみに冷たくされて、思い悩む。
そうして悩んでも体はどうにもならないようだ。
命はある。
その代わりに心が狂おしい。
辛さに耐え切れずに、ほら、涙が浮かぶ。
【ちょこっと古語解説】
○思いわび……「思いわぶ」は、好きな人に冷たくされて悩む気持ちを表す。
○さても……そうであっても。
○ものを……「~なのに」という逆接を表す。
○憂き……憂鬱な状態のこと。
○たえぬ……「たえ」は、耐えるの意。「ぬ」は、「ず」の変化で、「~ない」という打消の意味。全体で、「耐えない」くらいの訳。
思いわびさても命はあるものを憂きにたえぬは涙なりけり




