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第52首 名を惜しむ
うらみわび ほさぬそでだに あるものを こいにくちなん なこそおしけれ
あなたのことを恨みに恨んで、もう恨む気力もなくなりました。
そのたびに流す涙をぬぐっていたせいで、わたしの袖は乾きもしません。
袖がダメになってしまうのでさえ惜しいのに、それにもまして惜しく思うものがあります。
それはわたしの名誉。
うまくいかないこの恋が人の知るところとなって、わたしの名誉が汚されるのが惜しくてなりません。
【ちょこっと古語解説】
○わび……「~に疲れて」の意。
○だに……「~でさえ」の意。
○なん……「な」は、「必ず~」の意。「ん」は、「~だろう」という推量を表す。全体で、「必ず~だろう」くらいの意味。
恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋に朽ちなん名こそ惜しけれ




