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第49首 忘れない人
ありまやま いなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする
山に近い笹原に風が吹いて、笹の葉がそよそよと鳴る。
思い切って言いますが、それと同じことなんです。
あなたから連絡があれば、わたしの心は高鳴るもの。
どうしてあなたのことを忘れることなんてあるでしょうか。
【ちょこっと古語解説】
○有馬山……現在の神戸市北区有馬町あたりの山。
○猪名の笹原……今の伊丹市から尼崎市あたりの平野。
○いで……人を何かに誘うときや、自分が何かをしようとするときに発する語。
○そよ……笹の葉が「そよそよ」と鳴る音を表すとともに、「そのことなんですよ」という意味も表す。
○人……「大好きなあなた」の意。和歌の中で、「人」と来たら、そのように解釈して大体OK。
○忘れ……恋人を捨てる、という意味。和歌の中で、「忘る」と来たら、そう解釈できることが多い。
○やは……「~だろうか、いや~ではない」という「反語」という用法。
有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする




