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第39首 死に至る恋
あわれとも いうべきひとは おもおえで みのいたずらに なりぬべきかな
(謙徳公)
きみの態度は冷たくなって、ついには顔も合わせてくれなくなった。
悲しいよ。
でも、ぼくのこの悲しみをきみは分かってはくれないだろう。
だから、ぼくのことをかわいそうだとも、思ってくれはしないね。
このまま、きみに恋い焦がれながら、死んでしまいそうだよ。
【ちょこっと古語解説】
○言ふべき人は……べきは、「べし」で当然の意を表し、「~するはず」くらいの訳。「人」は、「恋しいあの人」の意。よって、「言ってくれるはずの恋しいあの人は」くらいの訳になる。
○思ほえで……「思ほえ」は、元の形は「思ほゆ」で、「思い浮かぶ」の意。「で」は、「~ないで」という意味。全体で、「思い浮かばないで」くらいの訳。
○いたづらになり……「いたづらになる」は、死ぬことを意味する。
あはれとも言ふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな
(拾遺和歌集/恋5-950)




