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第38首 会えるから
おうことの たえてしなくは なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし
(中納言朝忠)
きみに会えるから、その期待にいっそう苦しむんだ。
もしも会うことが絶対に無いのなら、あきらめもつくのに。
絶対に会えないのなら、かえってさあ。
きみの冷たさもぼくの不甲斐なさも、恨むことなんてないんだよ。
【ちょこっと古語解説】
○なくは……「もし無かったら」の意。
○なかなかに……かえって、の意。
○人をも身をも……人は「恋しいあの人」を指し、身は「自分自身」を指す。「あの人のこともこの身のことも」くらいの訳。
逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし
(拾遺和歌集/恋1-678)




