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第37首 その後の心
あいみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもわざりけり
(権中納言敦忠)
ずっとずっと夢見ていた、きみと結ばれる夜のことを。
やっとその時が来て、ぼくは天にも昇るようで、でも翌朝別れたあとのぼくはもの思いにふけるばかり。
きみのことが恋しくてたまらないんだ。
この気持ちに比べれば、以前きみを恋い慕っていた気持ちなんて、何ほどのものでもなかったんだなあと思うよ。
【ちょこっと古語解説】
○逢ひ見ての……「逢ひ(逢ふ)」「見(見る)」は、単に相手に会うということだけではなく、一夜を共にすることまで含む。
○ものを思はざりけり……「ものを思は(ものを思う)」は、恋のもの思いをする意。「ざり」は元の形が「ず」で、「~ではない」という意味。「けり」は、今初めて気がついた感動を表す語。なので、全部で、「恋のもの思いではなかったんだなあ」というくらいの訳。
逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり
(拾遺和歌集/恋2-710)




