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第36首 変心を恨む
ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ すえのまつやま なみこさじとは
(清原元輔)
約束したじゃないか。
たがいに涙を拭いた袖をしぼって。
波が山を越さないように、二人の心が変わらないということを。
それなのに、きみはぼくを裏切った。
裏切ったんだ。
【ちょこっと古語解説】
○契りきな……「契り」は、元の形が「契る」で、約束するの意。「き」は過去を表す。「な」は感動を表す語。
○かたみに……たがいに、の意。
○袖をしぼりつつ……和歌で、袖が出てきたら、涙を思い浮かべるのがよい。涙を袖で拭うわけです。拭った涙でびしょびしょになった袖をしぼるというわけ。
○末の松山……宮城県多賀城市あたりの地名。
契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは
(後拾遺和歌集/恋4-770)




