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第35首 恋の噂立つ
こいすちょう わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもいそめしか
(壬生忠見)
恋をしているというぼくの噂が早くも立ってしまったみたいだ。
どうしてだろう。
人に知られないように注意していたのに。
それにまだきみのことを思いはじめたばかりなのに。
【ちょこっと古語解説】
○てふ……「という」の意。
○名……世間の噂・評判。
○まだき……「早くも」の意。
○立ちにけり……けりは、気づき、を表す助動詞。「立ちにけり」で、気がついたら立ってしまっていた、くらいの訳。
○しか……もともとの形は「き」で、お勉強的なことを言うと、その「き」の已然形。「き」は過去を表す助動詞。
恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか
(拾遺和歌集/恋1-621)




