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第31首 いつか見た
みかのはら わきてながるる いずみがわ いつみきとてか こいしかるらん
(中納言兼輔)
広々とした野を割って大河が流れている。
その川のようにこんこんと湧き出て来るあの人への想い。
どうしてだろう。
一度も会ったことがないのにこんなに恋しいのは。
【ちょこっと古語解説】
○みかの原……京都府相楽郡加茂町を流れる木津川の北側の一帯。
○わき……「分き」と「湧き」の二つの意味が掛かっている。「分き」は、「分ける」の意で、「湧き」は、「湧く」の意。
○泉川……現在の木津川。
○いつ見きとてか……「見き」は、「見る」+「き」で、「き」は過去の意を表す。「とて」は、「といって」の意。「か」は疑問。全体で、「いつ会ったことがあるといってか」くらいの訳。
みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ
(新古今和歌集/恋1-996)




