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第295首 会えなくて
うずらなく ふりにしさとゆ おもえども なにそもいもに あうよしもなき
(大伴家持)
うずらが寂しげに鳴く、古びた都にいた頃から、
ずっと君を想い続けている。
会いたい、でも、会えない。
こんなに想っているのに、どうして会うきっかけさえないんだろう。
【ちょこっと古語解説】
〇 鶉……キジ科の小さな鳥。
〇故郷ゆ……「故郷」は、年月が経って古びた都(旧都である奈良)を指す。「ゆ」は「〜から」という場所の起点を示す語。
〇念へども……「念へ」は元の形は「念ふ」で「慕う」ほどの意。どもは、「~けれども」。全体で、「慕うけれど」。
〇なにそ……「どうして~なのか」と疑問を表す語。
〇妹……男性が親しい女性を呼ぶ語。愛しいあなた。
〇よし……手段、きっかけ。
鶉鳴く 故郷ゆ 念へども なにそも妹に 逢ふよしもなき
(万葉集4-775)




