293/297
第292首 人目のせい
ひとめおおみ あわなくのみそ こころさえ いもをわすれて わがおもわなくに
(大伴家持)
あなたに会わないでいる理由。
それは、人の目が多いから、ただそれだけです。
わたしの目があなたの顔を忘れてしまっても、
心まであなたのことを忘れてしまって、
それであなたに会わないなどというわけではないのです。
【ちょこっと古語解説】
〇多み……「多し」の語幹(=単語の中で変化しない部分)である「多」+「み」。「み」は理由を表す接尾辞(=単語の最後につけるもの)。多いので、くらいの訳。語幹+「み」の類例として、他にも例えば、「高み」で「高いので」、「青み」で「青いので」、となる。
〇さえ……「~まで」という添加の意味で、現代語の「さえ」とは別
〇妹……男性から見て親しい女性に呼びかけるときの言葉。あなた。
〇思わなくに……思わないのに。
人眼多み逢はなくのみそこころさへ妹を忘れてわが思わなくに
(万葉集4-770)




