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第288首 夫を待つ門
みちとおみ こじとはしれる ものからに しかそまつらむ きみがめをほり
(藤原郎女)
こちらまでいらっしゃる道は遠く、
あなたが来ないだろうことは分かっています
でも、おっしゃる通り、待っていられることでしょう。
あなたにお会いしたくて。
【ちょこっと古語解説】
〇路遠み……「遠み」は、「遠(=『遠し』の語幹)」+「み(=理由を表す接尾辞)」で、「遠いので」くらいの訳。全体で、「道が遠いので」ほどの意味。
〇来じ……「じ」は、打消推量(=「~ないだろう」)を表す助動詞。全体で、「来ないだろう」ほどの訳。
〇知れる……「る」は完了を表す助動詞。知っている。
〇ものからに……逆接を表す語。「~けれど」
〇しか……そのように。
〇らむ……現在推量を表す助動詞。「今頃~だろう」ほどの訳。
〇目をほり……「目をほる」で、「目と目を合わせたい」ことを表す。
【ちょこっと背景解説】
〇この和歌は、第287首への返歌。返歌とは、贈られた和歌に対する、お「返」事の和「歌」のこと。
路遠み来じとは知れるものからにしかそ待まつらむ君が目をほり
(万葉集4-765)




