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第285首 紐で結ぶ仲
たまのおを あわおによりて むすべらば ありてのちにも あわざらめやも
(紀女郎)
宝石を通す紐を沫緒に縒っておきますね。
こうしてより合わせるようにしていたら、
生きながらえたあとに会わないことがありましょうか。
いいえ、この紐がきっとわたしたちを巡り合わせてくれることでしょう。
【ちょこっと古語解説】
〇玉の緒……玉を通す紐のこと。玉とはボールのことではなく、宝石のこと。
〇沫緒……緒のより方を指すようだが、よく分かっていない。
〇縒り……元の形は「縒る」で、ねじり合わせて一本にすること。
〇結べらば……「結びあらば」の変化。「結んだら」ほどの訳。
〇あり……生きながらえること。
〇逢は……元の形は、「逢ふ」で、ただ会うだけではなく、一夜を共にすることまでを含む。
〇ざらめやも……「ざら(=打消の助動詞『ず』)」+「め(=推量の助動詞『む』)」+「や(=反語の助詞)」+「も(=詠嘆の助詞)」。全体で、「~ないことがあるだろうか、いや、ないことはないだろう」ほどの訳。
玉の緒を沫緒に搓りて結べらばありて後にも逢はざらめやも
(万葉集4-763)




