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ワカコイ ~恋の和歌~  作者: coach
万葉の歌
279/297

第278首 恋心なかば

おもいたえ わびにしものを なかなかに なにかくるしく あいみそめけん

(大伴家持)

 あなたへの思いを断ち切って、ひっそりとわびしく暮らしてきた。

 そのはずだった。

 それなのに耐えきれず、とはいえ覚悟も持たぬまま。

 こんな中途半端な気持ちで苦しいのに、どうして、あなたに会い始めてしまったのだろう。


【ちょこっと古語解説】

〇わびにしものを……「わび(=元の形は『わぶ』で、『わびしく暮らす』)」+「に(=完了を表す助動詞『ぬ』)」+「し(=過去を表す助動詞『き』)」+「ものを(=接続助詞『~だけれども』)」で、全体で「わびしく暮らしてきたのに」ほどの訳。

〇中々に……元の形(=辞書で引くときの形)は「なかなかなり」で、中途半端である意。

逢ひ見(あいみ)そめけ()……「逢ひ(あい)(=元の形は『あ()』で、単に会うだけではなく会って一晩過ごすことまで含む)+見そめ(=元の形は『見そむ』で、『初めて契りを結ぶ』)+「け()(=過去推量を表す助動詞『~だっただろう』)」で、「会い始めてしまったのだろう」ほどの訳。

おもひ絶えわびにしものを中々になにか苦しく逢ひ見そめけむ

(万葉集4-750)

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