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第272首 三重の痩身
ひとえのみ いもがむすばん おびをすら みえむすぶべく わがみはなリぬ
(大伴家持)
あなたがその身を結ぶなら一重で足りるでしょう。
その帯がわたしは三重に結べてしまえるほど。
それほどに私の身はやせ衰えてしまいました。
あなたへの恋心で。
【ちょこっと古語解説】
○妹…男性から見て、親しい女性を呼ぶときの呼び方。対義語は、背。
〇む…推量を表す助動詞。
〇べく…元の形(=辞書で引くときの形)は「べし」で、推量を表す助動詞。これも推量かよと思われるかもしれないが、腹を立ててはいけない。推量の助動詞は、古文には8個ある。
〇ぬ…完了を表す助動詞。訳は、過去と同じ「~た」でよい。
一重のみ妹が結ばむ帶をすら三重結ぶべく吾が身は成リぬ
(万葉集4-742)




