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第271首 夢のつらさ
いめのあいは くるしかりけり おどろきて かきさぐれども てにもふれねば
(大伴家持)
夢で会えるだけで嬉しいと言う人もいる。
しかし、わたしに言わせれば、夢で会うのは何とつらいことだろうか。
目を覚まして、あなたを確かめるために手探りしても、
何も手に触れないときの空しさといったらない。
【ちょこっと古語解説】
○夢……夢のこと。
○けり……「気づき」を表わす助動詞。「~だったのだなあ」ほどの訳。
○おどろき……元の形(=辞書で引くときの形)は「おどろく」で、「目を覚ます」こと。「驚く」ことではないので注意。
○ねば……「ね」は元の形は「ず」で打消を表わし、「ば」は原因・理由を表わす。全体で、「~ないので」ほどの訳。
夢の逢ひは苦しかりけりおどろきてかき探れども手にもふれねば
(万葉集4-741)




